【帝王霊~睦拾弐~】
文字数 996文字
和雅は美沙と共に川澄のストリートを歩き回っていた。
川澄の歴史はかなり古い。日本中何処を見ても未開の地など地上ではほぼなく、街という街では何人という人が死んでいるのはいうまでもなかったが、それにしたって川澄のストリートをうろつく浮遊霊の数は多かった。それもかつては江戸のお膝元とまでいわれた地であったからなのかもしれなかった。
美沙はあちらこちらにいる浮遊霊から情報を訊き回っていた。だが、中にはろくに話をしようともしなかったり、生気に満ちている和雅からエネルギーを奪い取ってやろうというろくでもない霊もいて、調査は中々に難航していた。
「こういう時、祐太朗だったらなぁ」
思わず美沙はぼやいた。美沙がそういうのも可笑しくはない。祐太朗は生きた人間でありながら、どんな怨霊、悪霊にも屈しない精神力の強さを持っている。そして、そんな業を背負ったような霊相手に一歩も引かず、それどころかアグレッシブなスタンスで因縁をつけに行けるようなたちの悪さがあったのも大きかった。性格の腐ったような霊でも、やはり攻撃的で怒りに満ちたヤツは相手にしたくないのはいうまでもないし、あまりしつこく攻撃されるのなら、と面倒臭さ半分で真実を話してしまうこともあるのだ。
「流石ゆうちゃんってところなんだな」
「うん。わたしも幽霊とはいえ、所詮は女子高生だしさ、まともに話そうとしても舐められて何も話してくれなかったり、面倒なことが多くて。詩織ちゃんもそこら辺は物凄く上手くてさ。浮遊霊を懐柔しちゃうというか、そういう器用さがあるんだよね」
「なるほど、ね。そういや、詩織さんは今何処にいるんだ?」
「わからない。確か五村市の探偵さんと一緒だって聴いたけど」
「探偵?」
「うん。確か『武井愛』さんだったかな」
「もしかして、教員をやってる双子のお姉さんがいる?」
「あぁ、うん。そんなこと聴いた! でも、どうしてそんなことを知ってるの?」
「そのお姉さんと友人でな。本人から聴いたんだよ」
「なるほどね」
「それよりも、これからどうしようーー」
「すみません」
突然、背後から声が聴こえた。非常に若い少年のような声でありながら、同時に不気味なほどに落ち着きのある声だった。和雅と美沙は振り返った。と、そこにはーー
「さっきから何をひとりで話してるんですか?」
少年ーー関口の姿がそこにあった。相も変わらず、不気味な笑みを浮かべていた。
【続く】
川澄の歴史はかなり古い。日本中何処を見ても未開の地など地上ではほぼなく、街という街では何人という人が死んでいるのはいうまでもなかったが、それにしたって川澄のストリートをうろつく浮遊霊の数は多かった。それもかつては江戸のお膝元とまでいわれた地であったからなのかもしれなかった。
美沙はあちらこちらにいる浮遊霊から情報を訊き回っていた。だが、中にはろくに話をしようともしなかったり、生気に満ちている和雅からエネルギーを奪い取ってやろうというろくでもない霊もいて、調査は中々に難航していた。
「こういう時、祐太朗だったらなぁ」
思わず美沙はぼやいた。美沙がそういうのも可笑しくはない。祐太朗は生きた人間でありながら、どんな怨霊、悪霊にも屈しない精神力の強さを持っている。そして、そんな業を背負ったような霊相手に一歩も引かず、それどころかアグレッシブなスタンスで因縁をつけに行けるようなたちの悪さがあったのも大きかった。性格の腐ったような霊でも、やはり攻撃的で怒りに満ちたヤツは相手にしたくないのはいうまでもないし、あまりしつこく攻撃されるのなら、と面倒臭さ半分で真実を話してしまうこともあるのだ。
「流石ゆうちゃんってところなんだな」
「うん。わたしも幽霊とはいえ、所詮は女子高生だしさ、まともに話そうとしても舐められて何も話してくれなかったり、面倒なことが多くて。詩織ちゃんもそこら辺は物凄く上手くてさ。浮遊霊を懐柔しちゃうというか、そういう器用さがあるんだよね」
「なるほど、ね。そういや、詩織さんは今何処にいるんだ?」
「わからない。確か五村市の探偵さんと一緒だって聴いたけど」
「探偵?」
「うん。確か『武井愛』さんだったかな」
「もしかして、教員をやってる双子のお姉さんがいる?」
「あぁ、うん。そんなこと聴いた! でも、どうしてそんなことを知ってるの?」
「そのお姉さんと友人でな。本人から聴いたんだよ」
「なるほどね」
「それよりも、これからどうしようーー」
「すみません」
突然、背後から声が聴こえた。非常に若い少年のような声でありながら、同時に不気味なほどに落ち着きのある声だった。和雅と美沙は振り返った。と、そこにはーー
「さっきから何をひとりで話してるんですか?」
少年ーー関口の姿がそこにあった。相も変わらず、不気味な笑みを浮かべていた。
【続く】