【一年三組の皇帝~漆拾玖~】

文字数 667文字

 心臓が胸を突き破りそうなほどの鼓動を打っていた。

 関口のカードを捲る動きがスローに見えた。実際はそんなことないだろうに、何故か動きがゆったり見えた。カードオープン。

 ダイヤの6ーーむしろ悪くなっていた。

 ぼくはホッとした。が、息は吐かなかった。息を吐けば鋭い関口ならすぐにそれを察知してまたカードを交換するに違いなかった。ぼくは相も変わらず緊張感を保とうとした。辻を見た。辻は別のヤツの手を確認していた。多分、関口の手を確認しつつ、下手な反応を見せないために他のヤツの手を確認することで何とか誤魔化そうとしたのだろう。まぁ、それが関口に見破られないとも限らない。つまり、それが好手か悪手かは関口本人にしかわからないだろう。

「反応が薄いねぇ」

 関口が飄々といった。こちらの反応を伺っているのが丸わかりだった。しかし、どんなにぼくと辻が何事もなかったかのように振る舞っても、見物している周りのヤツラの反応も参考になる。むしろ、ぼくや辻よりもいい自分の手のランクを知るにはいい指標になるのはいうまでもなかった。

「うん、いい感じで誤魔化してるね」関口がいった。「お陰で自分の手がどうだか読めないや。まぁ、一回戦はこんなモンでいいかな?」

 関口のことばに呼応するように、周りの連中も納得するような態度を見せた。見せたが、関口に引っ付く金魚の糞の表情は何処となく不服そう。つまり、このゲームが負けだと悟っているからだろう。だが、関口はその異変に気づかないのか、敢えてそうしているのかわからないが、そのままーー

「じゃあ、勝負でいいね?」

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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