【湿気た花火~拾参~】
文字数 550文字
夕方、茜色の空が美しかった。
時刻は16時を少し過ぎたくらい。時間的に地区の祭りが始まった頃だった。おれはまだ家にいた。個人的な感覚で申しワケないのだが、おれは昔から、家にいて微かに聴こえる祭り囃子の音が好きだったのだ。微かに聴こえて来る東京音頭のサウンドは、何処かの小学生が弾いているイビツなピアノのサウンドにも似た風流さがあった。
だが、その祭り囃子が全然聴こえて来ないのだ。
これは流石にどうしたモノかと思わざるを得なかった。祭り囃子や東京音頭はおろか、それらしき音もまったく聴こえて来ないのだ。おれは再び時計を確認した。やはり16時を少し過ぎたくらい。ボードに貼られた祭りの詳細が書かれたA4の用紙を見た。やはり、開始時刻は16時となっていた。となると、もう始まっていなければ可笑しい。まだ始まったばかりということもあって、そこまで賑わっていないということだろうか。
母親に事情を訊こうにも、祭りの役員のひとりで祭りのほうへ行ってしまっていることもあって、話を訊くもクソもなかった。それまでは祖母が役員のひとりを担っていたのだが、アルツハイマーがひどくなりすぎて入院して以降は、母親がその役員を引き継いだというワケだ。
取り敢えず五時になったら行ってみようーーおれはそう決意した。
【続く】
時刻は16時を少し過ぎたくらい。時間的に地区の祭りが始まった頃だった。おれはまだ家にいた。個人的な感覚で申しワケないのだが、おれは昔から、家にいて微かに聴こえる祭り囃子の音が好きだったのだ。微かに聴こえて来る東京音頭のサウンドは、何処かの小学生が弾いているイビツなピアノのサウンドにも似た風流さがあった。
だが、その祭り囃子が全然聴こえて来ないのだ。
これは流石にどうしたモノかと思わざるを得なかった。祭り囃子や東京音頭はおろか、それらしき音もまったく聴こえて来ないのだ。おれは再び時計を確認した。やはり16時を少し過ぎたくらい。ボードに貼られた祭りの詳細が書かれたA4の用紙を見た。やはり、開始時刻は16時となっていた。となると、もう始まっていなければ可笑しい。まだ始まったばかりということもあって、そこまで賑わっていないということだろうか。
母親に事情を訊こうにも、祭りの役員のひとりで祭りのほうへ行ってしまっていることもあって、話を訊くもクソもなかった。それまでは祖母が役員のひとりを担っていたのだが、アルツハイマーがひどくなりすぎて入院して以降は、母親がその役員を引き継いだというワケだ。
取り敢えず五時になったら行ってみようーーおれはそう決意した。
【続く】