【湿気た花火~睦~】
文字数 580文字
時間がゆったりと動いているようだった。
こころなしかそんな気がした。別に暇なワケでもないのだが、場所が変われば空気も変わるのはいうまでもなかった。ひとりで暮らしている空間は何処までも灰色で、そこにイロドリはなかった。あるのは、ただメシを食い寝るために帰るだけの無機質な生活だ。別に娯楽がないワケではないのだが、あの部屋はただ台本と向き合うばかりで、いつも何かに追われていることもあってか、常にソワソワするようの空気感がある。
対して実家の自分の部屋は過去に自分が集めた娯楽物で溢れ返っている。中には過去に勉強したノートや何かもあるのだが、基本的には今の自分を構成してくれた娯楽が部屋を埋めている。モノに溢れているという意味では落ち着かないのだが、無味無臭じゃないこともあってか、ひとり暮らしの部屋と比べるとこっちはにおいに溢れている印象だ。
そして、それらはおれのセピア色の過去をボンヤリと甦らせてくれる。平日は毎日学校に行き、部活をやって帰れば、映画や小説、ゲームが迎えてくれる。たまに塾なんかもあったが、それはそれで当時は勉強しつつも友人に会えたり、塾の先生とのコミュニケーションが楽しかったこともあって、大変な反面楽しさもあった。あの頃は生き急ぐ感じもなく、ゆったりと生きていた。
ーー今のおれが求めていたのは、そのゆったりとした時間だった。
【続く】
こころなしかそんな気がした。別に暇なワケでもないのだが、場所が変われば空気も変わるのはいうまでもなかった。ひとりで暮らしている空間は何処までも灰色で、そこにイロドリはなかった。あるのは、ただメシを食い寝るために帰るだけの無機質な生活だ。別に娯楽がないワケではないのだが、あの部屋はただ台本と向き合うばかりで、いつも何かに追われていることもあってか、常にソワソワするようの空気感がある。
対して実家の自分の部屋は過去に自分が集めた娯楽物で溢れ返っている。中には過去に勉強したノートや何かもあるのだが、基本的には今の自分を構成してくれた娯楽が部屋を埋めている。モノに溢れているという意味では落ち着かないのだが、無味無臭じゃないこともあってか、ひとり暮らしの部屋と比べるとこっちはにおいに溢れている印象だ。
そして、それらはおれのセピア色の過去をボンヤリと甦らせてくれる。平日は毎日学校に行き、部活をやって帰れば、映画や小説、ゲームが迎えてくれる。たまに塾なんかもあったが、それはそれで当時は勉強しつつも友人に会えたり、塾の先生とのコミュニケーションが楽しかったこともあって、大変な反面楽しさもあった。あの頃は生き急ぐ感じもなく、ゆったりと生きていた。
ーー今のおれが求めていたのは、そのゆったりとした時間だった。
【続く】