【ナナフシギ~捌拾捌~】

文字数 627文字

 いたちごっこに鬼ごっこーーそんなことをしている暇は一分一秒となかった。

「何で?」と祐太朗が訊ねるも、岩淵はうっすらと笑みを浮かべるばかりで、

「それはわたしにもわかりません。ただ、わたしたちの存在がわかって、しかもわたしたちに会いたくない者がいるということだけはわかりますね」

 霊力の動きを察知する能力は、祐太郎にはなかった。逆にいえばそれが出来る岩淵の霊力はいうまでもなく相当のモノだった。そもそも、祐太朗も詩織も和雅も、何の霊力も持たない両親とは反対に突然変異的に霊力を持ってしまったこともあって、後に巨大な新興宗教へと成長する教団関係者の中でも奇特な能力者ということになる。そして、岩淵は一族とは無関係の人間の中でも唯一、霊力を持つ存在として君臨しているというワケだ。

「今は、ヤツらはどう動いてる?」

 祐太朗が訊ねると岩淵は電波を受信するかのように軽く首を傾けた。そして、いった。

「......こちらに近づこうとしています」

「は?」祐太郎は足を止め振り返った。「どういうことだ」

 岩淵は振り返ることなく、そのまま足を止めていったーー「動きが止まりました」

「止まった?」

「えぇ」頷く岩淵。「坊っちゃんが足を止めたと同時に、坊っちゃんの動きを察知したようにピタリと動きが止まりました」

 祐太朗はワケがわからないといった表情で廊下の奥から顔を叛けた。

「行きましょう。もう時間がない」

 岩淵がいうと、祐太朗と岩淵は再び体育館へ向かって歩き出した。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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