【帝王霊~百弐拾~】

文字数 611文字

 見上げた夜空には星がたくさん輝いていた。

 祐太朗は背中を強く打ち、咳き込んだ。呼吸するのも苦しく、目を開けていられないようだった。頭は打っていなかった。打っていなかったが、目が回ったようだった。転んだのか。にしてもうしろに倒れるというのは、転んだというよりーー

「よくやった」成松がいった。「殺せ」

 殺せーー祐太朗はハッとして立ち上がろうとした。が、首を手刀で押さえつけられ、そのまま送り襟絞めされる。祐太朗の息と声が微かに漏れた。自分の首を締め付ける腕を剥がそうとした。太い前腕。相当鍛えられているのがわかった。毛は濃かった。だが、そんなことはもはやどうでもよくなるかのように祐太朗の意識は混濁していった。

 ゆっくりと目が閉じられていく。霞む視界から光が消えていく。祐太朗の身体から力が抜けていく。そして、そのまま闇が訪れた。

 だが、音だけはまだ聴こえていた。息はまだあった。そして、身体が下ろされる感覚があった。絞められる感覚も消えた。少しだが、息が気道に入って行くようだった。

「さて」

 成松の声が聞こえた。余裕のある声だった。だが、それはすぐに色を変えた。

「......何のつもりだ。おれを殺すつもりか?まぁ、これはおれの身体じゃないからーーは? 貴様、裏切るのか?」

「裏切るも何も、最初から味方だと思ってませんよ」

 慇懃無礼なモノいいだった。そして、成松の悲鳴が聴こえた。

 祐太朗の意識が真っ暗になった。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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