【帝王霊~百弐拾伍~】

文字数 662文字

 夜のストリートにスマホの着信音は無機質にしか響かなかった。

 まだ電話にも出ていないのに不思議と悪い報告だとわかってしまうかのようだった。それを証明するかのように佐野めぐみは電話に出ようとしなかった。祐太朗の表情も何処となく緊張しているようだったが、

「出なくていいのか?」

 といわざるを得なかった。すると佐野はハッとして祐太朗のことばに同意した。同意した時点で、後回しに出来るような内容ではないと悟っているのがわかった。緊急を要するーー或いは、なるべく早い内に連絡しておかなければならないようなこと。佐野は尚も電話に出ようとしなかった。

「いいのか?」

「......まぁ、これわたしのスマホじゃないから」

「お前のじゃない?」祐太朗の表情は疑念に満ち溢れていた。「どういうことだ?」

「そのままの意味だよ」佐野は続けた。「これはアイのスマホ。アイは出れないけど、彼女に掛かって来る電話は今回の件に関することの可能性が高い。そして、その電話の主が警察官なら余計に、ね」

「警察?」祐太朗は驚きを隠さなかった。「警察署からの電話なのか?」

 佐野は首を横に振っていった。

「川澄署の生活安全課の人間から。林崎シンスケ警部補。アイのお父さんの部下だった人」

 林崎ーー祐太朗には、その名前に聞き覚えはなかったようだった。川澄の中学生、林崎シンゴと同じ苗字。当然だ。シンスケはシンゴの父親なのだから。

「なるほど」祐太朗は事情を察したようだった。「警察官が相手なら人の電話に勝手に出ることも躊躇いがーー」

 佐野は通話ボタンをスライドした。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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