【湿気た花火~弐~】

文字数 665文字

 殆ど気の迷いだったのかもしれないーー実家に帰るなんてのは。

 実家なんて何年帰っていなかったか覚えていなかった。少なくとも、例のウイルスが蔓延してからというモノ、帰ってはいない。それは下手に帰って感染しているかもしれないウイルスを実家に持ち帰らないためみたいな高尚な理由からではなかった。

 いってしまえば、シンプルに帰る理由がなかったのだ。

 親との仲は良くはない。おれがパニック障害を発症した時、現実を見ることなくただひたすら存在しない神に祈って時間と金を無駄にし続けた両親のことは許す許さないとかではなく、もはや生きている次元が違う存在だと諦めていた。どちらが上で下か、その基準は明言出来ない。ただ、生活基準でいえば、おれのほうが圧倒的に下だが、思想やイデオロギーに関していえば、おれのほうがずっとマシだと思っていた。おれは困難や苦境を祈ってどうにかしようとするのは逃げだと思っている。自分で考え、解決の糸口を見つけ、未来を切り開いて行くーーそれがおれの主義で、神頼みとは無縁だった。

 そういう意味でいえば、おれと両親は相容れない存在だといっても過言じゃなかった。かといって仲が悪いワケでもない。虐待されたワケでもないし、そこまで関心がないというのが本音だろうか。

 そんなおれが、数年ぶりに実家に帰った。

 同じ市内に住んでいるとはいえ、実家のあるエリアの景色を見ると痛く懐かしい気分になった。わざわざ歩いて帰ったのだが、健在している実家の姿を見ると、久しぶりな、懐かしい気分になった。

 どうやら、おれもまだ子供らしい。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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