【冷たい墓石で鬼は泣く~玖拾捌~】

文字数 626文字

 かがり火が揺れて今にも消えそうになっていた。

 夜闇を濃くする冷たい風がビュウビュウ音を立てていた。と思いきや雨が屋根を叩く音が聴こえた。これは荒れるとわかった。

「それで、何の用だ?」

 朗らかにしゃべってはいるが、それがあくまで笑みを浮かべた面でしかないのはわかっていた。この者にわたしを歓迎する気は毛頭ない。わたしはどう話を切り出して行くか考え、少しでも間を稼ぐために「はぁ」と相槌を打った。完全に出方を迷ったような反応に相手はわたしに好印象を押し売りするようなわざとらしい笑みを浮かべた。

「どうなされた? 何だか元気がないようだが」

 元気がないのはいうまでもなかった。今日に至るまでのここ数日間、まともに寝てはいないし、歩き通し動き通し、メシもろくに口に出来ていない上に冷たい風に打たれ続けている。そして何より堪えるのは生き死にが掛かっているというギリギリの緊張感だった。ほんの少しの間ならまだしも、日を跨いで緊張感を持ち続けなければならないのは、身体も精神も磨り減らしていくようなモノだ。

 正直、もう限界だった。さっさとこの地獄のような時を終わりにしたい。わたしは決心して口を開いたーー

「それはそうです。アナタの送り込んだ刺客の相手が大変だったのですから」

「刺客? 何のことだ」

 まるで初めて聞いたとでもいうような反応だった。だが、実際はそんなことはない。

「惚けるのはやめなされ。賊の連中が全部謳った。主がすべての黒幕だとな。平蔵さん」

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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