【ナナフシギ~捌拾死~】
文字数 599文字
外と内から見る景色は基本的に異なる。
それは当たり前といえば当たり前なのだが、この場合はまたちょっと特殊ではあった。
外から見た学内の様子はいつも通りの学校だった。だが、ドアを開けて中に入ってみれば、そこはカビやヘドロのような汚れに満ち満ちた世界と化していた。学内にはほんのりとした悪臭が漂っていた。ヘドロとカビの中にはやはり真っ黒な人影が幾多も佇み、行き来していた。
「昨日よりも酷いですねぇ」まったく危機感を感じさせない安穏とした口調で岩淵はいった。「まるでわたしたちが来ることを予測していたかのようですね」
「んなことはどうでもいいだろ」ぶっきらぼうに祐太朗はいった。「それより、こっからどうすんだよ」
「おやおや、何の考えもなしにここまで来られたのですか?」
「ふざけんな。テメェなら何処に誰がいて、何があるとか検討ついてんだろ」
「わたしはここの教員でもなければ生徒でもないのですがねぇ」
「だったら何でわざわざ表口から入った。中に入るだけだったら裏からでも全然いいだろ」
「鍵を破るにもやり易い型とやり難い型があるんですよ」
「裏口の鍵を試したワケでもねえのに、よくそっちが開きづらいってわかるな」
「昨日試した、という可能性は?」
祐太朗は何もいわなかった。何もいえなかったというよりは、この問答がまったく意味のなさないモノだとわかっていたようだった。岩淵は不敵に笑った。
「行きましょうか」
【続く】
それは当たり前といえば当たり前なのだが、この場合はまたちょっと特殊ではあった。
外から見た学内の様子はいつも通りの学校だった。だが、ドアを開けて中に入ってみれば、そこはカビやヘドロのような汚れに満ち満ちた世界と化していた。学内にはほんのりとした悪臭が漂っていた。ヘドロとカビの中にはやはり真っ黒な人影が幾多も佇み、行き来していた。
「昨日よりも酷いですねぇ」まったく危機感を感じさせない安穏とした口調で岩淵はいった。「まるでわたしたちが来ることを予測していたかのようですね」
「んなことはどうでもいいだろ」ぶっきらぼうに祐太朗はいった。「それより、こっからどうすんだよ」
「おやおや、何の考えもなしにここまで来られたのですか?」
「ふざけんな。テメェなら何処に誰がいて、何があるとか検討ついてんだろ」
「わたしはここの教員でもなければ生徒でもないのですがねぇ」
「だったら何でわざわざ表口から入った。中に入るだけだったら裏からでも全然いいだろ」
「鍵を破るにもやり易い型とやり難い型があるんですよ」
「裏口の鍵を試したワケでもねえのに、よくそっちが開きづらいってわかるな」
「昨日試した、という可能性は?」
祐太朗は何もいわなかった。何もいえなかったというよりは、この問答がまったく意味のなさないモノだとわかっていたようだった。岩淵は不敵に笑った。
「行きましょうか」
【続く】