【湿気た花火~捌~】

文字数 653文字

 懐かしさが込み上げて来た。

 地区の祭りのお知らせーーそう書いてあった。そう、やはりこの外夢の端っこにある小さな区域でも、やはり夏祭りというのはやっているモンなのだ。例のウイルスが蔓延して間もなかった頃は流石にやっていなかったろうが、そんな地区の祭りが今でもやっているということを考えると何だか感慨深かった。

 地区の祭りということもあって、その規模は小さい。ほんと公民館とそのすぐ隣の駐車スペース、道路のほんの一部を使った小さな小さな祭りだった。小さい子どもならそれでも満足出来るかもしれないが、これが中学生にもなるとモノ足りなさを感じて、別の地区のちょっとだけ規模の大きい祭りに気が移ったり、外夢駅周辺で行われる比較的大きな祭りである『外夢祭』のほうへ行こうとするのが自然のことだった。

 だが、おれは何だかんだ、中学いっぱいまでは地区の祭りには行っていた。確かに規模も小さいし大した祭りではないのだが、多分、あの空気感が好きだったんだと思う。それに、かき氷もフランクフルトも、焼きそばもやけに旨く感じられた。それが忘れられなかったのかもしれないーーだって、今のおれがそもそもそれを忘れられていないのだから。

 それに、中学三年は受験期で土曜日も塾に缶詰めだったこともあって、夕時のメシ休憩に、ちょっとした憩いを求めて地区の祭りへと出掛けたりもしたのだ。

 そう、あの地区の祭りは小さくもおれにとってはノスタルジアのひとつであり、夏の娯楽の象徴でもあったのだ。

 行ってみるかなぁーー思わず呟いていた。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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