【湿気た花火~弐拾~】

文字数 667文字

 光と闇のコントラスト。

 いつだって光を浴びている人間は闇の中で静かに佇んでいる人間から覗かれている。そこにはマイナスの感情が渦巻いていることが殆どだ。だが、それがない場所を少なくともひとつ知っている。

 それが舞台の袖口だ。

 もちろん、すべてがとは断言できないが、基本的に舞台の表と裏ではドス黒い感情が渦巻くことはない。光を浴びてアクトする人は威風堂々と。闇の中でスタンバイする人は自信を持って待機していたり、緊張と不安を抱いていたりーーだが、そこには喜びも混じっていたりとひとことでいい表せるモノではない。

 あの外夢祭の中、久しぶりに『ブラスト』の人間と会った。『ブラスト』はおれが初めて所属した劇団で、様々なノウハウを学んだところだった。芝居へ取り組むスタンスの違いで袂を分かったが、久しぶりに会うと互いに何を話していいかわからずとも、若干照れ臭そうに挨拶はするのは、互いが互いを本当に毛嫌いしているのではないことを示していた。

 頑張ってるみたいだねーーそういわれた。どうやら、たまにおれのSNSを覗いてどんな活動をしているか見ているらしい。何だか照れ臭くなった。

 おれはもう『ブラスト』に戻ることはない。戻るべき場所でもない。だが、そこの人間がまだ自分のことを気に掛けてくれているのは何だか頼もしかった。

 どうやら、この二週間ほど、実家に戻ったのは間違いではなかったようだった。

 場面の転換で舞台上が暗転した。すべてが闇に包まれた。次はおれの出番だ。闇の中を歩き舞台の上へ。

 舞台が明るくなった。

 湿気た花火が花咲いた。

 【幕】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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