【帝王霊~百参拾壱~】
文字数 646文字
まったくバカげた施設だった。
この世の中、オカルトやスピリチュアルに満ち満ちているが、それが本当かといわれればかなり懐疑的ではある。確かにそれが存在する証明も出来なければ、同時に存在しない証明もすることは出来ない。
だが、その曖昧さが故に、信ずる者と信じない者が二極化され、それが極端さを生んでいる。信ずる者はとことん、それこそ人生を賭けて、行く人であれば自分の人生を擲って信仰へと身を投じる。だからこそ、この手の詐偽、あるいは詐偽紛いの商売というのは尽きることはない。何故なら、それが有り得ないことだと証明することが出来ないのだから。
この施設にはそんな狂信的な人間がたくさんいた。佐野めぐみは身を隠しつつ、辺りを見回る信者たちの目を盗んで、施設の中を探索していた。時に信者を気絶させ、強引に進んでいった。
佐野には霊の存在が見えている。それは背面観察という『恨めし屋』と呼ばれる闇の稼業を監視する立場であるが故、イヤでも霊魂のある環境に身をおかなければならないからだ。そもそもが背面観察という役処が、ある程度の霊感を有していなければ出来ないのだが、そんな仕事をしていると霊感はより強まって行く一方で並みの精神力では勤まらなくなってしまう。だからこそ、ある程度、自分の人間的なこころを殺せなければ、背面観察なんて仕事は出来ないのだった。
佐野は施設奥の本堂のところまで来た。そして、そのすぐ横にある『先達室』と書かれた扉を横に引いた。佐野の目から光が消えた。
「お久しぶりですね」
【続く】
この世の中、オカルトやスピリチュアルに満ち満ちているが、それが本当かといわれればかなり懐疑的ではある。確かにそれが存在する証明も出来なければ、同時に存在しない証明もすることは出来ない。
だが、その曖昧さが故に、信ずる者と信じない者が二極化され、それが極端さを生んでいる。信ずる者はとことん、それこそ人生を賭けて、行く人であれば自分の人生を擲って信仰へと身を投じる。だからこそ、この手の詐偽、あるいは詐偽紛いの商売というのは尽きることはない。何故なら、それが有り得ないことだと証明することが出来ないのだから。
この施設にはそんな狂信的な人間がたくさんいた。佐野めぐみは身を隠しつつ、辺りを見回る信者たちの目を盗んで、施設の中を探索していた。時に信者を気絶させ、強引に進んでいった。
佐野には霊の存在が見えている。それは背面観察という『恨めし屋』と呼ばれる闇の稼業を監視する立場であるが故、イヤでも霊魂のある環境に身をおかなければならないからだ。そもそもが背面観察という役処が、ある程度の霊感を有していなければ出来ないのだが、そんな仕事をしていると霊感はより強まって行く一方で並みの精神力では勤まらなくなってしまう。だからこそ、ある程度、自分の人間的なこころを殺せなければ、背面観察なんて仕事は出来ないのだった。
佐野は施設奥の本堂のところまで来た。そして、そのすぐ横にある『先達室』と書かれた扉を横に引いた。佐野の目から光が消えた。
「お久しぶりですね」
【続く】