ローマ略奪

文字数 1,118文字

今日、ミゲル・セルベートに関するエッセイで、スペイン語の文を翻訳しながら生涯をたどり、ちょうど彼がカール5世の戴冠式を見て激しい怒りを感じている部分を書きました。
戴冠式で彼が激しい怒りを感じたのは、儀式の豪華さや民衆の教皇に対する崇拝だけでなく、その3年前に起きたローマ略奪も大きく関係していると思いました。
ローマ略奪が起きたのは1527年、私やフェリペが生きている時代だ。あれは酷い事件だった。スペインの王カルロス1世は教皇クレメンス7世と対立し、ローマで教皇軍とスペイン軍が衝突した。教皇はサンタンジェロに逃げ込み、教皇軍は敗れたのだが、スペイン軍は指揮官が戦死したこともあってローマで激しい略奪が行われた。
スペインはカトリックの国ですよね。その王が教皇と対立し、さらにスペイン軍がローマで略奪を行うなんて信じられません。
戦争の時、人間は理性や信仰心などは失ってしまう。私の父は第4回十字軍の戦士だった。第4回十字軍は資金不足でエルサレムへは行かれなくなり、東ローマ帝国で父が皇帝の位を簒奪された皇太子を助けるという名目でコンスタンティノープルに向かった。最後は皇帝の父やその皇太子も殺されてしまい、混乱の中で十字軍戦士は凄まじい略奪を行い、東ローマ帝国を滅ぼしてロマニア帝国を建国した。
ロマニア帝国?聞いたことない国の名前です。
ロマニア帝国は建国後100年もしないうちに滅びた。私はロマニア帝国で生まれたが、修道士となって国を離れ、私が生きている間に祖国はなくなっていた。
十字軍でもローマ略奪でも戦争は人間を狂わせてしまう。信じられないほど悲惨な事件があっても、結局教皇はそれを許してしまう。
同じキリスト教徒の市民や聖職者を虐殺しても強い者が勝って成功者になってしまえばその罪は許され、異教徒や違う考えの者は徹底的に弾圧して殺している、僕の生きた時代は狂っていますね。
ミゲル・セルベートはローマ略奪で加害者と被害者だったスペイン王カルロス1世(カール5世)とクレメンス7世が何事もなかったかのように戴冠式の儀式を行うのを見てカトリックに失望しました。何もできなかった教皇を民衆は崇拝し、その体に触れれば救われると信じていたのです。
余の父上サンチョ・ラミレス王はローマに巡礼に行って、教皇やフランス王との関係を強め、サン・ペドロの家臣になると誓った。だから兄上にペドロという名前を付け、後にできたウエスカの修道院もサン・ペドロ・エル・ビエホとつけられた。王と教皇が対立し、ローマで略奪が行われるなど信じられない話だ。
そうですね、時代によって王と教皇の関係は大きく変わります。最後になりましたが、作品集には下の写真から入ってください。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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