ケプラーの不幸

文字数 1,539文字

前に占星術と天文学について話題にしたのですが、ケプラーの人生の不幸についてもう1度話したいと思います。作品集は下の肖像画から入ってください。
天文学とか地動説とかは古い亡霊にとっては最も苦手な話だ。太陽や月ではなく地球がまわっているなどということは、考えただけで眩暈がする。
僕の時代でも地動説はまだ完全に広まったわけではありません。でもそういう話はワクワクします。
ケプラーは確かルドルフ2世のいるプラハに招かれ、ティコ・ブラーエの助手になって彼の20年分の観測資料を受け継ぐという幸運に恵まれた。天文学者として名前を歴史に残したのだから、幸運というか強い運命の星の下に生まれたのではないのか?
ルドルフ2世は私と同じように政治が嫌になって趣味に没頭したオタクな皇帝ですよね。私とは規模が違いますが・・・
ルドルフ2世の宮廷でティコ・ブラーエと出会ってその観測資料を引き継いだのはケプラーにとってものすごく幸運でした。でも彼の前半生はかなり不幸です。
どういった状況で不幸だったのだ?
ケプラーの一族は元々はよい家柄でした。でも彼が生まれた頃にはすっかり落ちぶれていました。ケプラーのお父さんは傭兵でしたが家では妻に暴力をふるっていました。義父母からの嫁いびりもあり、ケプラーのお母さんはかなり悲惨でした。そしてお父さんはケプラーが子供の時に出て行ったきり戻ってきませんでした。戦死したのかそれとも別の場所で暮らしていたのかわからなかったのです。
かなり酷いですね。
それでもケプラーは頭がよかったので奨学金をもらって勉強を続けました。ただ本人は神学を学んで聖職者になることを希望したのですが、割り当てられたのは数学の教師という仕事でした。
自ら進んで聖職者になろうとしたのか。
カトリックの修道士のように生涯独身で神に仕えるというよりも、この時代のプロテスタントの聖職者は安定した地位と収入が得られるよい仕事だったのだと思います。でもその聖職者にもなれず、そして一族は没落して不幸になった者が多かった、その不幸の原因を知ろうとして、ケプラーは占星術にのめり込みました。
ティコ・ブラーエもまたデンマーク王の援助を受けて本格的に天体観測を行った。目的はやはり占星術で正確な星の運行を知って占いに役立てようとしていた。
僕たちの時代、占星術は教会は禁止していたのに占星術は盛んだったのですね。
戦争やペストなどの災害から個人の運命まで占星術で知ることができれば役に立つ。
王の援助があって天体観測を続けたティコ・ブラーエと自分の不幸の原因を知ろうとして占星術にのめり込んだケプラーはプラハで出会います。それまでケプラーは宇宙に関する独自の本を出版して注目を浴びていましたが、彼を有名な天文学者にしたのは受け継いだ観測資料をもとにして考え出したケプラーの法則があったからです。
どうせそのケプラーの法則とかいうものは、古い亡霊にはチンプンカンプンなものだろう。
私にもよくわからないので、詳しい説明ははぶきます。私がショックだったのは、不幸だったケプラーのお母さんが最後は魔女として告発されたということです。
僕たちの生きた時代は医学や天文学などで大きな発見がありながら、異端審問や魔女狩りなども盛んに行われていました。
お母さんが魔女として告発された時、ケプラーが行動して処刑は免れましたが、拷問によって体を痛めつけられ、釈放されてから半年後に亡くなりました。
酷い・・・
自分の不幸の原因を知ろうとしたケプラーは占星術にのめり込むことで、天文学の扉を開けました。でも彼のお母さんのように夫や義父母の暴力に悩まされ、最後は魔女として密告されてしまう、どこまでも悲惨で不幸な人生だった人、同じ時代にたくさんいたと思います。


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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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