修道院長の顔はいつも怖い

文字数 1,605文字

今日は2000字ファンタジーに『将来の選択と亡霊のトモダチ』を投稿しました。小説のページは下の写真から入ってください。この写真はリェイダの大聖堂です。
ただ今回は、小説のことを直接話題にするとネタバレになるので、別のタイトルにしました。もう最後の方になっているので、途中を読んでない人はそちらから読んでください。
タイトルにもなっているけど、修道院長という立場の人は、みんないつも怖い顔をしているのだろうか?
これ、フェリペ。失礼なこと言ってはいけない。あの方にはあの方なりの事情があって・・・
でも、いつも怖い顔をして不愛想というのは、人とコミュニケーションを取る時にあんまりよくないと思うけど・・・
このような意見も出ていますが、まずは修道院長として長く生きたラミロ2世はどうですか?
修道士や修道院長にとって愛想のよさは必要ないというか邪魔になるばかりだ。そして修道院長というものはすべての修道士の頂点に立つ、大変な重荷を背負っている。
確かにそうですね。
そして修道院長というのは、家柄がよいことが多い。王家や貴族などの末弟の王子が修道院に入れられ、修道院長になるからだ。彼らは権力から遠ざけられるが、かと言ってのんびりもしてられない。修道院での熾烈な争いの中、常にトップに立たなければならないからだ。
修道院の中ではどのような能力でトップ争いをしているのですか?
血筋のよさと頭の良さ、それから口のうまさだ。
ニコラさんは血筋と頭はよかったけど、口下手だったよ。
また出たな。年齢詐欺の修道士が・・・
年齢詐欺というけど、修道士の年寄り2人が出てもあんまりおもしろくないから、アントニオには若い姿で出てもらっている。
ニコラさんは血筋と頭はいいけど、いつも不愛想で怖い顔をして口下手だったから、出世には苦労していた。
私は別に出世したいとは思っていなかった。でもアントニオががんばったから結果として修道院長になった。修道院長という立場になったものならわかるが、愛想よくニコニコなどしていられない。怖い顔と言われたがそれが普通の顔だ。
余も同じだ。余の場合は特に王家出身というプライドもあるから、修道院の中で常にトップであり続けなければならない。自然に表情もこわばってくる。
修道院長でもともと怖い顔をしていたラミロ2世が王様になって粛正を行って死後亡霊になって出て来た。その時がどれだけ怖ろしいか想像して欲しい。僕は初めてラミロ2世に会った時は怖くて声も出なかった。
こういう話をしていると、修道院長は怖い顔をした人ばかりだと思われるけど、僕のニコラさんはそんな人ではなかったです。人前では厳しかったけど、僕の前ではとびっきりの笑顔を見せてくれて・・・
今なにか聞いてはいけない話を聞いた気がする。お前たちは一体どういう関係だ?
どういう関係って、修道士仲間だよ。僕たちは苦労を共にしていて深い絆で結ばれていた。
それだけではないだろう。ほら、古代ギリシャやローマでよくあった・・・
ニコラさんは古代ギリシャ語やラテン語も得意だったから僕にいろいろな話をしてくれた。
純粋無垢なアントニオに余計な話を吹き込まないでくれ。中世のキリスト教系修道院は戒律が厳しいからそんなことあるわけがない。
僕の時代になると聖職者や修道士でもけっこういろいろなことしてますけど・・・
それは後の時代の話だ。ラミロ2世や我々の時代ではそんなことは絶対になかった。
その通りだ。修道院長というのは重荷を背負い、しかも孤独な立場にいる。顔が怖くなるのも無理はない。
じゃあ、僕のいる修道院の院長の顔が怖いのも、僕に対して怒っているわけじゃなくて、修道院長という立場にいる人はみんな怖い顔をしていると考えればいいのですね。
そう思います。今日の話はこれで終わりにします。
修道院長の仕事が大変だから顔が怖くなるのか、もともと怖い顔の人が修道院長になっているのか、よくわからないにゃー。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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