残酷な人間は亡霊にならない

文字数 1,344文字

昨日、亡霊よりも人間の方が怖いというテーマだったのですが、そもそも残酷な人間は亡霊にはならないと思います。
昨日の話については作品集を見て下さい。
僕のお父さんは亡霊については、生きている時にあまりにも辛い体験をしていると生まれ変わりの時に魂がその感情を切り離してしまうと言っていました。切り離された感情が亡霊です。
余の場合は突然王位を継ぐことになり、国を守るために残酷な粛正をおこなってしまった。
ラミロ2世は亡霊になる典型的なタイプです。状況が大きく変わりやむを得ず粛正を行ったが、それが本当に正しいことなのか常に迷いがあった。だから亡霊になるのです。
余はレコンキスタの英雄として称えられながらも、カタリ派を巡る争いで破門されてその状態で戦死してしまった。
ペドロ2世は納得できない状況で戦死した、だから亡霊になっています。
余は父上と対立して教皇にそそのかされ反乱を起こしてしまった。
ハインリヒ7世の場合が1番悲惨で苦しい体験をしています。
私はやる気がなくて宮廷を王妃とその寵臣が牛耳るに任せてしまった。王国の財政は傾き、私は王にふさわしい棺を作ってもらうこともできずに亡霊になってしまった。
フアン1世もまた状況に流され思うように生きられないまま死んで亡霊になりました。
結局亡霊になるのはただ辛い体験というよりも、生きていた時に全人格を否定されるような経験をしたことが原因となるように思います。貴族に馬鹿にされたり破門されたり反乱で捕らえられて目を潰されて幽閉されたり、その落差が激し過ぎた時、納得できずに感情が残り亡霊になってしまうのだと思います。
私の父は第4回十字軍の戦士であった。たくさんの人を殺し随分残酷なこともしてきたが、亡霊にはなっていない。それはそのまま領土をもらってうまくいき、教皇も破門を解いてくれた。成功が続く限り人間は己の行為を反省することはない。
十字軍を呼び掛けた教皇やハインリヒ7世をそそのかした教皇、それから宗教改革の教祖とかは常に自分が正しいと思い反省することはないですよね。
残酷なことをした人間の方が反省することもなくそのまま天国に行っている、逆に生きている時にな悩んだり苦しんだりした人が死後も亡霊になってさまよい続ける、なんかすごく不公平な気がします。神は本当にそういう世界を望んでいるのでしょうか?
神の意志はわからないが、私は残酷なことをして反省もしない魂がウヨウヨ集まっている天国には行きたくない。最初は清らかでもすぐに汚れてしまう。だから神はそういう魂はすぐに人間界に送り返してしまい、人間界での争いは絶えないのであろう。
ニコラさんは確か本が読みたいから天国には行きたくないと言っていましたよね。
それもある。本もなく残酷な人間がウヨウヨ集まっている天国には行きたくないから地上にとどまった。
それで亡霊になるとは珍しい。
私の場合は亡霊とはまたちょっと違う非物質の存在だ。呼び名は何でもいい。亡霊や非物質の存在とうまくバランスを取ってこそ、人間の世界も平和を保てる。
本のページをめくることもできない亡霊がそんなにすごいことができるのですか?
大きなことはできなくても、身近な人間の意識を変えることくらいならできるかもしれない。それについてはまた明日話そう。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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