カルタゴを建設するディド

文字数 1,352文字

チャットノベル『フェニキア文字とヘブライ文字』でカルタゴ建国の伝説について話題にしました。作品集には下の絵の画像から入ってください。
これはジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナーの描いた『カルタゴを建設するディド』です。
この絵では人物が小さくゴチャゴチャ描かれているからディドがどこにいるかよくわからない。
僕が生きた少し前のルネサンス期にはギリシャ神話や伝説を題材にした絵がたくさん描かれています。でも人物はもっと大きく中心に描かれていて、誰だかすぐわかるようになっています。
ターナーはイギリスで19世紀に活躍した画家です。当時のイギリスは産業革命の後で裕福な市民がたくさんいたので、風景画がたくさん描かれるようになりました。さらに権威であったロイヤル・アカデミーは雄大な景色と遺跡の中に神話や伝説を描いた絵を高く評価していました。
つまりこの絵はロイヤル・アカデミーの権威を強く意識して描かれているのだろう。実際に建国当時をイメージするならば、すでに遺跡があるというのはありえない。
伝説を正確に再現するというよりも、遺跡やエキゾチックな風景を描くというのが当時の流行りだったと思います。そしてターナーはディドとアイネイアースの物語が大好きだったので、カルタゴとディドに関する絵は何枚も描いています。
ディドとアイネイアースの物語について詳しくは『フェニキア文字とヘブライ文字』の中で私が説明している。
あの話は納得できないことが多過ぎる。そもそもアイネイアースが女神アフロディーティの子で、母親が息子を心配して子のエロースを使ってディドがアイネーアスを恋するようにしたとか、全くメチャクチャな話だ。
ギリシャ神話は多神教なので、神様はたくさん出てきてそれぞれ勝手なことしています。
我々アラゴンの王族は恋をするということがよくわからない。結婚とは子孫を残し領土を広げるためにするもの。いかに条件のよい相手を見つけるかが重要になってくる。余はモンペリエを相続したマリアと結婚して、モンペリエを手に入れた。
余の場合は早く丈夫な子を産んでくれるというのが1番の条件だった。もちろん家柄も重要だが、子持ちで未亡人だったイネスが1番都合がよかった。
余は結婚相手よりも別の王女に密かな思いを抱いていたが、結ばれることはなかった。
私は2回結婚しています。最初の妻マルタは優しくて、私は彼女に甘えて我がままを言っていました。2番目の妻ビオランテは気が強かったので、私はもう彼女の言いなりになっていました。
王族の人は政略結婚がほとんどなので、恋愛感情を理解するのは難しいと思います。
別に女王が恋をしてもよい。だが男が旅立ったからといって、悲嘆の余り炎に身を投げて命を絶つというのはやりすぎではないか。余の娘ペトロニーラは20歳以上年上のバルセロナ伯と結婚したが、無事世継ぎに恵まれて女王としての人生を全うした。
普通はそうですが、ドラマチックな話の方が伝説として残りやすく、絵の題材にもなります。
余の『ウエスカの鐘』も伝説となり、後の時代の画家が絵に描いている。
ウエスカの修道院の王家のパネルにもその絵は使われています。有名な絵があると、実際の光景とは違っていてもその絵から想像しやすくなり、歴史の説明でも絵が使われたりしています。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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