ピエール・ガッサンディ(2)
文字数 796文字
ガッサンディの哲学史上最も大きな功績は、ローマ共和国にギリシア哲学が輸入されて以来エピクロスが被っていた誹謗を退け、その唯物論を復権したことである。ガッサンディはなにより物理学者であり、経験論者であったのでエピクロスの原子論を好む下地が備わっていた。その好みは言語学界で長らく称賛されていたルクレティウスを研究することで強まった。ガッサンディはエピクロスの「快楽主義」にまつわる偏見を取り除き、エピクロスの道徳的な純潔さを擁護した。さらに唯物論と「無神論」が同一でないことを、エピクロスが神々に犠牲を捧げた事実や、神が第一原因であり世界すべてを創造したというガッサンディ自身の説によって論証しようとした。
宇宙論においてはプトレマイオスとコペルニクスとティコ・ブラーエが最も重要であるとし、その中でもコペルニクスが最も単純で徹底的に事実を表象したものと称賛した。時間と場所は神による世界創造以前から存在し、物質(原子)は神によって最初の運動を与えられたのであるとも考えた。
ガッサンディの死後、「理性」を強調するデカルト学派と「経験」を重く見るガッサンディの学派はパリ大学で対立しつつスコラ哲学の影響を掘り崩し、ガッサンディの友人であるホッブズはデカルトの粒子説を支持したが、ニュートンの原子論はガッサンディの方法で組み立てられている。