亡霊よりも人間の方が怖い

文字数 1,356文字

最近投稿された2000字小説は、亡霊を使って異母弟を怖がらせるとか、面倒な亡霊を異母弟に押し付けるとか、亡霊が怖いもの、面倒なものであるということを強調しているような気がする。
すみません。コメディなので大げさに書いています。作品のページには下の写真から入ってください。
他でどういう話が出ているかわからないが、ここの作者の書いた小説やチャットノベルの中では、亡霊は本のページすらめくることができず、新しく作られた壁のパネルすら見ることができない。物理的に何もできない亡霊が生きている人間に危害を与えることはない。
それはわかっています。亡霊は人間に危害を加えることはできなくて、せいぜい怖がらせたり邪魔になるくらいです。
僕もそのことはよくわかっているので、異母弟を本気で傷つけようとは考えていません。ただちょっと怖がらせたり困らせたいと思っただけです。軽い冗談です。
歴史を考えれば亡霊よりも人間の方がはるかに怖いです。
第4回十字軍では、キリスト教徒の国であった東ローマ帝国のコンスタンティノープルを襲い、たくさんの市民を虐殺している。
第1回十字軍では聖地を取り戻すという目的は達成しましたが、行くまでにたくさんの都市で略奪や虐殺が行われました。そしてエルサレムではそこに住んでいた多くのユダヤ教徒、イスラム教徒が虐殺されました。
余の父上と教皇は対立し、多くの国と人を巻き込んだ争いになってしまった。その後イタリアの都市では教皇派と皇帝派の争いが長く続いた。
中世までは教皇の呼びかけで十字軍が行われたり、教皇と皇帝の対立が悲惨な戦争になってしまった。教皇というキリスト教世界のトップに立つ者の権威が多くの人を巻き込み人間を残酷にしてしまったように思います。
私は第4回十字軍によってできたロマニア帝国で生まれた。最初は騎士になろうとしたが、キリスト教徒の残虐行為に疑問を持ち、修道院に入った。修道士が全て清い心を持っているわけではない。そこはそこで金や権力を巡っての争いの場所でもあった。直接剣を使わなくても密告という手段で相手を陥れる者はいくらでもいた。残酷な争いがあるということでは俗世間と変わらない。
私達が生きた16世紀は宗教改革が始まり、プロテスタントは教皇の権威を否定した。だが争いはますます激しくなっている。カトリック大国のスペインは当時世界で最も残酷な国にもなっていた。新大陸で文明を破壊して住民を虐殺し、異端審問でプロテスタントや異教徒を容赦なく拷問にかけ処刑している。
余の父上、アラゴン2代目の王サンチョ・ラミレスはローマに巡礼をして教皇と結びつきを強め、教会の制度を整えて理想の国を作ろうとした。ペドロ1世兄上が王、アルフォンス1世兄上が軍隊、そして余が聖職者として頂点に立ち、兄弟が力を合わせてアラゴンを守っていくことを理想としたのであろう。それが長い歴史の中で、王や軍隊、聖職者の権威が間違った方法で使われ、人殺しの道具に使われてしまったとしたら嘆かわしい。
人間が残酷になるのは、個人の争いよりも、宗教や権威が関わって死後の救いや大きな権力、財産を保証してしまった時だと思います。それは現代も変わらず、宗教や国の制度、イデオロギーのために残酷になっています。亡霊よりも人間の方がはるかに怖いです。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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