亡霊よりも人間の方が怖い
文字数 1,356文字
他でどういう話が出ているかわからないが、ここの作者の書いた小説やチャットノベルの中では、亡霊は本のページすらめくることができず、新しく作られた壁のパネルすら見ることができない。物理的に何もできない亡霊が生きている人間に危害を与えることはない。
私は第4回十字軍によってできたロマニア帝国で生まれた。最初は騎士になろうとしたが、キリスト教徒の残虐行為に疑問を持ち、修道院に入った。修道士が全て清い心を持っているわけではない。そこはそこで金や権力を巡っての争いの場所でもあった。直接剣を使わなくても密告という手段で相手を陥れる者はいくらでもいた。残酷な争いがあるということでは俗世間と変わらない。
私達が生きた16世紀は宗教改革が始まり、プロテスタントは教皇の権威を否定した。だが争いはますます激しくなっている。カトリック大国のスペインは当時世界で最も残酷な国にもなっていた。新大陸で文明を破壊して住民を虐殺し、異端審問でプロテスタントや異教徒を容赦なく拷問にかけ処刑している。
余の父上、アラゴン2代目の王サンチョ・ラミレスはローマに巡礼をして教皇と結びつきを強め、教会の制度を整えて理想の国を作ろうとした。ペドロ1世兄上が王、アルフォンス1世兄上が軍隊、そして余が聖職者として頂点に立ち、兄弟が力を合わせてアラゴンを守っていくことを理想としたのであろう。それが長い歴史の中で、王や軍隊、聖職者の権威が間違った方法で使われ、人殺しの道具に使われてしまったとしたら嘆かわしい。