ヨアキム主義
文字数 1,155文字
ヨアキムはエデンの園での人間の堕落の後、神はその埋めあわせのために、歴史に精神原理を導入する必要があると考え、さらに三位一体的構造を世界史に当てはめ、全歴史は三つの時代からなるとした。第一の時代は「父の時代」で、地上においてはイスラエルの民が選ばれた祭司と預言者の時代であり、旧約の時代に当たる。第二の時代は「子の時代」であり、教会の時代で、キリスト以後現在まで続いているとした。これは過渡的な時代であって、1260年ころから始まる「聖霊の時代」によってやがて克服される。この第三の時代において、世界は完成し、地上においては修道士の時代が出来する。ヨアキムの考えでは、第三の時代に置いて聖霊は直接個人個人に語りかけ、現在ある教会秩序や国家などの支配関係に基づく地上的秩序は必要がなくなり、兄弟的連帯において修道士が支配する時代が来るとされる。
ヨアキムの死後、なぜ彼の思想が修道士の間で熱狂的に支持されたか、わかるような気がします。ヨアキムの思想では当時の支配関係や秩序が否定され、修道士の支配する時代が来ると言っています。現実社会を否定し、特定の人間が支配する、あるいは救われるとすれば、その思想に飛びついて夢中になる人が必ず出ます。人間は昔から続いている社会や秩序をそのまま続けるように言われてもあまり感動しない、古い考えを否定して、しかも自分たちが支配者になれる、救われるとした考えに夢中になるのです。そしてその考えに夢中になる人が増えれば当然それが不都合になる人(それまでの支配者)が出てきます。新しい考えは不都合になる人によって弾圧され、異端にされてしまうのです。