修道院でおしゃべりしてはいけない

文字数 1,301文字

昨日投稿した小説『ペドロ2世の鎧』の中でラミロ2世とペドロ2世がおしゃべりしているのを見て、フェリペが疑問を覚える場面がありました。小説のページは下の肖像画から入ってください。
今回の肖像画は小さい。
いつも大きな肖像画を出していたら読者が読みにくいです。
僕がいた修道院では食事やお祈りの時間はもちろん、歩きながらとか作業中のおしゃべりも禁止されていました。それなのに亡霊になったラミロ2世とペドロ2世が護身術の学校の廊下で歩きながらしゃべるとはどういうことですか。2人は声が大きいから僕はヒヤヒヤしました。
確かに修道院では余計な会話は禁じられていた。普段の生活でも必要最低限のことしか話さなかった。
でも、ニコラさんと僕は修道院の中でもいろいろなことを話していたけど。
あれはおしゃべりではなく対話であった。お前は若い頃は本当に投げやりで危なっかしい子であった。お前をどのように育て導くか、私はいろいろ考え結果として多くの言葉を口にした。
そういう理由があるならわかります。でも僕が入った護身術の学校でラミロ2世とペドロ2世が話をするのは、どう考えても無駄なおしゃべりですよね。
確かにそうだが、久しぶりに祖先と会ったのだ。つもる話もたくさんある。
いえ、別にアラゴンの王様同士が集まっておしゃべりしてもいいですよ。ただ僕の目の前、気が散るような場所でするのはちょっと・・・
亡霊というのは悲しいかな、生きている人間を目標にしないと出現するのは難しいし、前にも話したが本のページすらめくれない非力な存在だ。
出てもいいけど、もうちょっと静かにしてもらえませんか。ラミロ2世は修道士生活が長いのだから、余計なおしゃべりをしてはいけないと習っているはずです。
余も修道院にいる頃は規則を守っていた。王家の血筋を引く修道院長だから、常に皆の手本とならなければいけない。だが、修道院では亡霊になった後どうするかについて何も教えてはもらえなかった。
当たり前です!そもそもキリスト教社会では亡霊を認めていないし、邪悪なものとして忌み嫌っています。たまたま僕の父さんが特殊な教えを受け継いでいたから、僕も亡霊に対して理解があるのです。
そう、それが問題だ。キリスト教社会では例え亡霊が見えたとしても邪悪なものにされてしまう。そういう人間にまとわりついたら、相手の人生を破壊してしまうから、我々も用心して近づかないようにしている。だからそなたのような特別な人間を見つけると、うれしくなって関わりたくなる。
別にいいですけど・・・
ラミロ2世は生きている時はずっと真面目に規則を守り、あまりしゃべることもなかった。亡霊になってからはその反動が出ているのかもしれない。許してやってくれ。
他の人に見つかる心配がなければいいですけど・・・亡霊というのは生きていた時と性格が変わるのですね。
性格が変わるというよりも、生きている時は本来の性格を押さえて役割に従って生きるしかなかった。亡霊となった今、そうしたしがらみから離れて自由にのびのびとできる。今が1番幸せな時かもしれない。
ラミロ2世がとんでもないこと言っていますので、今日はここで終わりにします。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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