ジェルメーヌ・ド・フォワ(2)

文字数 1,830文字

ジェルメーヌ・ド・フォワは1505年にアラゴン王フェルナンド2世と結婚します。この時ジェルメーヌは17歳、フェルナンド2世は53歳でした。ジェルメーヌはナバラ女王レオノールの孫であったため、この結婚でフェルナンド2世はナバラ王位を主張して、1515年に征服が完了します。
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フェルナンド2世が1516年に没すると、その王位を継いだのは孫カルロス1世(のち神聖ローマ皇帝カール5世となる)だった。
未亡人となったジェルメーヌ・ド・フォワは28歳でした。カスティーリャとアラゴンの王位は娘のファナが継ぐ予定でしたが、ファナが夫の浮気と死で精神錯乱になっていて幽閉され、女王ファナがまだ生きている時に長男のカルロス1世が共同統治でスペイン王となり、1517年にネーデルラントからスペインにやってきます。
カルロスはまだ若い義理の祖母でまた従姉にあたるジェルメーヌとの間に私生児イサベルをもうけた。
え、いくら若いといっても義理の祖母にあたる人と関係を持ってしまうのですか?王子がまだ若い父の後妻と恋愛関係になるという話はよく聞きますが、いくら若くても義理の祖母というのはちょっと・・・
これは絶対ジェルメーヌが誘惑したのです。カルロス1世がスペインに来たのは17歳の時、外国育ちで右も左もわからない若い王は、いくら元王妃でも未亡人になって立場が弱くなったジェルメーヌにとって格好の獲物です。再び権力を手に入れるチャンスと思い誘惑したのでしょう。
カルロスはジェルメーヌをヨハン・フォン・ブランデンブルク・アンスバッハ(アンスバッハ辺境伯フリードリヒの息子でプロイセン公アルブレヒトの弟)と結婚させることにし、2人はバルセロナで式を挙げた。1523年、2人はカールによりバレンシア副王とされた。
カルロス1世も馬鹿ではない、義理の祖母と関係を持って私生児まで生まれてしまったから、このまま関係を続けたら自分の立場が危ないと思い、ジェルメーヌを適当な男と結婚させてバレンシア副王の地位を与えたのでしょう。
スペイン王家のすごいスキャンダルですよね。
1519年から1523年にはハプスブルク家のカルロス1世に対してジェルマニアの反乱として知られる職人組合の反乱がバレンシアで起こった。
ちょうどカルロス1世がスペインに来てジェルメーヌが誘惑していた時ですね。
アラゴン王妃ジェルメーヌ・ド・フォワは残酷なまでに反乱の主導者を抑圧し、このことはカルロス1世への権力集中を加速させた。ジェルメーヌ・ド・フォワは100人以上の死刑状に署名したとされており、800人もの死刑が行われた可能性がある。
酷い話です。若い王を誘惑してうまく権力を手に入れた王妃がバレンシアの反乱で多くの人を処刑しています。
政略結婚はバルセロナ朝のアラゴンでも盛んに行われていました。私の弟マルティンの子マルティーノはシチリア女王と結婚してシチリア王位を手に入れ、後にナバラ王女とも結婚しているのでその間の子が育てば、アラゴン、シチリア、ナバラの3つの王冠を手に入れていたはずです。でもそれは守るべきルールを守った上での政略結婚です。バルセロナ朝が途絶えて、アラゴンはもうアラゴンではなくなり、力づくや狡猾さ、陰謀などで生き残った者が権力を握り、残酷になっていったような気がします。
1526年にジェルメールはヨハンと死別したため、今度はカラブリア公フェルナンド(イタリア名フェルディナンド、フェルナンド2世が廃位したナポリ王フェデリーコ1世の王太子だった)と3度目の結婚をした。ジェルメールはカラブリア公と共に引き続きバレンシア副王を務め、2人は芸術と音楽の後援者となった。1538年にジェルメーヌは没するが、その後もカラブリア公は1550年の自身の死まで副王を務めた。死後はバレンシアの王立聖ミゲル修道院に埋葬された。
なんかこうすっきりしないモヤモヤする話ですね。
ジェルメーヌの生涯の話を聞いて、モヤモヤする原因は2つあるようです。1つはナバラ侵略やバレンシアでの反乱など多くの人の運命を変え、人の命を奪っていながらあまりそのようなイメージをもたれていないこと(それほど有名でもないが)もう1つはカルロス1世とのスキャンダラスな関係が、おそらく良い相手との結婚に繋がったのではないかということです。不道徳なことをしていながら、成功して権力を手にしている、だからモヤモヤするのだと思います。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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