ジョルダーノ・ブルーノ(5)

文字数 1,507文字

ジョルダーノ・ブルーノについての続きです。作品集は下の画像から入って下さい。
ヴェネツィアに来たブルーノは、モチェニゴの家庭教師を2ヶ月つとめた。だが、そのモチェニゴによって訴えられ、1592年、ヴェネツィア官憲によって逮捕された。さらに、ブルーノのことを聞きつけた異端審問所が介入し、最終的にローマの異端審問所に引き渡された。
ヴェネツィア艦隊は1204年の第4回十字軍と一緒に東ローマ帝国のコンスタンティノープルを攻略したのがきっかけでクレタ島などの領土を得て東地中海最強の海軍国家となりました。その後も領土を広げて15世紀後半にはキリスト教世界でも屈指の海軍力を持つ都市国家になりました。けれどもその後はオスマン帝国の進出や大航海時代で貿易の舞台が大西洋や太平洋に変わったことでヴェネツィアは衰えていきました。モチェニゴがブルーノから記憶術を学ぼうとしたのは、個人の欲望だけでなく記憶術という魔術を使ってヴェネツィアに昔の栄光を取り戻そうとしたのかもしれません。でもブルーノの教えたことは期待外れでした。
1593年にローマに移されて以降、裁判はなかなか実施されず、ブルーノは7年を獄中で過ごした。彼への告発理由は神への冒涜、不道徳な行為、教義神学に反する教説であり、ブルーノの哲学と宇宙論にみられるいくつかの点も問題とされた。ブルーノは教皇クレメンス8世に直接面会して自説の一部を撤回することを明言すれば嫌疑は晴れると考えていたが、クレメンス8世はこれを拒絶し、異端審問の開始を命令した。
クレメンス8世はこの時代の教皇としては珍しく、聖職者としても政治家としても優れた人物として評価されていましたが、ジョルダーノ・ブルーノやベアトリーチェ・チェンチとその家族の処刑を許したことなどで、後世の評価に汚点を残しています。
異端審問が行われると、当時の異端審問所の責任者であった枢機卿のロベルト・ベラルミーノはブルーノに対し、自説の完全な撤回を求めたが、ブルーノは断固としてこれを拒絶した。結果、罪状は24に上がり、上記に加えて魔術・占術の信奉、マリアの処女性の否定、輪廻説の支持などが挙げられた。
輪廻説の支持などは当時のキリスト教社会では考えられないことだと思います。
1600年1月8日、ベラルミーノはブルーノを異端とし死刑判決を下した。同年2月17日、ローマ市内のカンポ・デ・フィオーリ広場に引き出されたブルーノは火刑に処された。処刑の様子はブレスラウの学生ガスパール・ショップが目撃し、家族に送った手記により後世に伝えられている。それによると、ブルーノは処刑を宣告する執行官に対して「私よりも宣告を申し渡したあなたたちの方が真理の前に恐怖に震えているじゃないか」と言い、結果舌枷をはめられた。さらに、刑の直前に司祭が差し出した十字架へは侮蔑の一瞥をくれただけで顔を背け、死の際には1つも声を発さなかったという。遺灰はテヴェレ川へ投げ捨てられ、遺族に対しては葬儀ならびに墓の造営も禁じられた。
ジョルダーノ・ブルーノが訪れた場所は、本人は意識していないでしょうが、宗教の争いで迫害や虐殺が行われた場所ばかりです。ローマ(ローマ略奪)、ジュネーブ(ミゲル・セルベートの処刑)、トゥールーズ(アルヴィジョア十字軍)、パリ(サン・バルテルミの虐殺)、ロンドン(メアリー1世のプロテスタントに対する迫害)、プラハ(フス戦争)そしてヴェネツィアで捕らえられローマで処刑されています。人間が過ちを犯した場所を巡礼し、自身がカトリックの中心であるローマで殺されているというのは、まるでキリスト教徒の過ちを象徴し告発しているようです。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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