ニコラウス・コペルニクス(10)

文字数 1,182文字

ニコラウス・コペルニクスについての続きです。作品集は下の画像から入って下さい。
しかし、惑星の運動は太陽のように簡単には解決できなかった。たとえば火星の運動はずっと複雑で、火星は平均より早く動くこともあれば、遅く動くこともあった。そして通常は恒星の間を東に進む火星の動きは、およそ2年に一度遅くなり、止まって、数か月にわたって逆行してからまた東向きに進みはじめるのだった。
火星が複雑な動きをしているということは、かなり昔から知られていたのですね。
この逆行現象を説明するためにプトレマイオスは火星を反時計回りで回る2つの円の組み合わせとした。一つは地球のまわりを回る大きな円で、その円の上を小さな円が回ることによって、逆行を説明した。しかし火星の観測結果を説明するにはさらに、大きい方の円の中心を地球から外し、さらに別の1点(エカント)を設定し、火星の大きな円はエカントから見て「一様な角度で動く(角速度一定)」ことが必要だった。プトレマイオスはこの単純な仕組みで、惑星の変化する速さと逆行の様々な長さにとても近い予測が出せることを発見した。
聞いていて頭がクラクラしてきた。天文学者というのはいつもこんな面倒なことを頭の中で考えているのか。
しかしプトレマイオス天文学を受け継いだ中世アラビアには、エカントは一様な円運動の原則からはずれたごまかしと考えるものもいた。特に「マラーガ学派」とも称される一群の天文学者らは、エカントを避けて小周転円の導入で等速円運動の原則を維持しながら、プトレマイオスの理論と同じ予言を再現してみせた。特にイブン・シャーティルとコペルニクスの理論の類似は著しく、コペルニクスが彼らの研究に気が付いていた可能性が指摘される。
イブン・シャーティル(1305年頃ー1375年頃)はダマスクスの天文学者です。
コペルニクスはプトレマイオスのモデルをアリストテレスの原則に合うように修正しなければならないと考え、ボローニャ大学での法学の勉強のかたわら、『アルマゲストの要約』を読んで惑星モデルについての理解を深めていった。コペルニクスは1504年に火星を観測し、「火星は表より2度進んでおり、土星は1度と2分の1遅れている」と書き残している。
医学の歴史はガレノスを中心に翻訳されて伝えられ、ヨーロッパだけでなくイスラム社会の学者の研究が付け加えられ、それを熟読した者が新しい発見をしています。天文学もプトレマイオスを中心に様々な研究が行われ、イスラム社会の学者の意見も加えられてコペルニクスの時代には様々な場所で議論が行われていました。それを知り、さらにプトレマイオスの研究書を熟読した、そういう積み重ねがあったからこそ歴史を変える発見をしたのであって、それは偶然や個人の思い付きではなく長く行われてきた研究の結果が新しい発見につながったのだと思います。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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