アラゴンはフランス風の宮廷文化を持つ先進国だった

文字数 1,722文字

前に2000字ファンタジーで『アラゴンの王女コンスタンサ』という小説を書き、ハインリヒ7世が自分が生まれる前、ハンガリー王妃だった頃の母に会っているのですが、今回はその後のコンスタンサについて話題にしてみたいと思います。
妹のコンスタンサについてなら、余も大いに関りがある。
小説については、下の肖像画から作品集のページに入ってください。
まずはアラゴン王家、家系図のおさらいをします。ラミロ2世の娘ペトロニーラがバルセロナ伯ラモン・バランゲー4世と結婚し、長男のアルフォンス2世がアラゴンとバルセロナの両方を受け継ぐこととなり、アラゴン・バルセロナ連合王国となります。
この結婚の後、アラゴンは発展して大国となる。娘の結婚相手にバルセロナ伯を選んだ余の目に狂いはなかった。
アルフォンソ2世はカスティーリャ王アルフォンソ7世の娘サンチャと結婚して、ペドロ2世、コンスタンサ他たくさんの子に恵まれます。その中でアルフォンソはプロバンス伯となり、フェルナンドはモンテアラゴンの大修道院長となりました。
やっぱり末弟の王子は修道院に入れられてしまうのか。
それはまあ仕方のないことですね。
余は1196年から1213年までアラゴン王だった。
17年、結構長いですね。
長ければいいというものでもない。余の在位は1134年から1137年のたった3年だ。だがその3年の間に粛正をして、王妃を娶って、娘の結婚相手まで決めた。王としてやるべきことは全部やっている。
それもまたすごい。
別に長く王であったことを自慢しているわけではない。妹のコンスタンサが結婚した年齢と余の在位の期間を比べてみるがいい。
アラゴン王女コンスタンサは1198年にハンガリー王イムレ1世と結婚し、1209年にシチリア王フリードリヒ2世と結婚しています。この時はまだ皇帝ではありませんが。そしてハインリヒ7世が生まれたのは1211年です。
つまり、妹のコンスタンサが結婚と再婚した年、それから甥のハインリヒ7世が生まれたのはすべて余の在位中ということになる。
本当だ。当時のアラゴン王はペドロ2世だ。
野心家の余が、妹の結婚に無関心だったと思うか?そんなことはない。確かな証拠はないが、ハンガリー王、そしてシチリア王との結婚を取りまとめたのは余であると思って間違いない。
それならば、ハインリヒ7世が生まれたのはペドロ2世のおかげでもあるのですね。
ハ・ハ・ハ、余の偉大さにようやく気付いたようだ。もっとも結婚した当時のフリードリヒ2世はまだ15歳でシチリア王の称号を持っていただけだった。それにシチリアはまだ荒れ果てていた。アラゴンの方がずっと格上だった。
僕が習った歴史の教科書だと、フリードリヒ2世がどれだけ権力を持っていたかが強調されていたけど、結婚した当時はアラゴンの方が格上の国だったのですね。
10歳年上のアラゴン王女コンスタンサがシチリアにフランス風の洗練された宮廷文化を持ち込んだ。いいか、大事なことだから繰り返す。余の時代、アラゴンはピレネーの麓の小さな国ではない。フランスとの関係が深い、洗練された先進国で大国だった。
僕たちはまだまだアラゴンについて知らないことがたくさんありますね。
妹のコンスタンサは1222年に亡くなっている。ハインリヒ7世が11歳の時だ。ハインリヒ7世のその後の不幸を知らないで死んで、むしろよかったのかもしれない。もっとも余はそれ前に戦死しているけど・・・
ハンガリーとオーストリアにいた頃の母上に会い、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。子を失った悲しみを抱えながら、それでも新しく生まれた余を精一杯いつくしんで育ててくれた。それなのに・・・
しかたがないよ。生きている時には気づけないことがたくさんある。だからこそ僕たちはこうして出会った。生きていた時に気づかなかった思いを知り、それを次の世代に伝えるために・・・
フェリペ、君は時々本当によいことを言う。
余が在位した時のアラゴン王国はフランス風の洗練した宮廷文化を持つ先進国で大国だった。それを忘れないで欲しい。
これで今日の話は終わりにします。
アラゴンはフランス風の宮廷文化を持つ先進国だった。にゃんか長いタイトルだにゃー。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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