クラウディオス・プトレマイオス(11)
文字数 797文字
『ハルモニア論』第2巻では主に第1巻の論証で得られた音律に基づく施法について述べられている。続く第3巻後半で、プトレマイオスは、死すべきものども、その中でもとりわけ人間が判別するハルモニアを論じることから離れて、完全なる調和の世界である天上の世界で奏でられている調和の音楽(宇宙の諧調)を解き明かそうとする。
しかしながら、現伝する筆写本は中途半端なところで切れており、これについてはテキストが散佚したと見る説と、未完成であると見る説とがある。また、そもそも第3巻後半部自体が偽作であるという説もある。当該箇所は3,4世紀には早くも一度散佚しており、14世紀にビザンチンの学者ニケフォロス・グレゴラスが再発見して補填したとされる。真作説をとる場合、この部分の筆致の確信に満ちた様子から、『ハルモニア論』が『アルマゲスト』や『テトラビブロス』を書き上げた後の最晩年の作であるという見方もある。
『ハルモニア論』は、執筆後1500年近く経ってヨハネス・ケプラーが読んだことによって、思いがけない形で科学史に影響を及ぼすこととなった。ケプラーはプトレマイオスが宇宙の諧調を解き明かしていると考えられる第3巻の散佚した章の復元を試みるうちに、数々の重要な発見へと至る道を見つけた。