歴史を伝えるファンタジー

文字数 1,410文字

今日3月31日は2000字ファンタジーの締め切りです。2月は歴史小説、3月はファンタジー小説ということで、それぞれ10話ずつ書いてきました。作品集は下の写真から入ってください。
写真はモンソン城です。ほんとうにそっけない場所ですが、この場所が想像を掻き立ててくれました。
余はモンソンに行けて実に楽しかった。
それは余も同じだ。我が子ハイメがあの城で育ったと考えたら涙が出そうになった。
ラミロ2世とペドロ2世の2人は僕とハインリヒ7世を置き去りにして2人でどんどん先を歩いていましたよね。歌なんか歌いながら・・・
余の父上や異母弟たちに比べ、アラゴン王家の者は歌のレベルが低いとよくわかった。(個人の見解です)
歴史小説の中では同じ時代の中だけで話を進めていましたが、ファンタジー小説ではその縛りがないので、自由にいろいろな時代に行きました。
おかげで余はハンガリーにいた時の母上や異母弟など、実際には会うことのない家族に会うことができた。
僕がハインリヒ7世の旅に同行した意味はなんだったのですか?
1つはモンソンの時と同じように亡霊が迷子にならないための引率の先生という役割です。そしてもう1つ、前世を知るという役割もあります。
前世ですか?
他の亡霊の人もそうですが、ハインリヒ7世は特に絶望が深くて簡単に浄化できない、だからいろいろな人に会って頑なな心を溶かす必要があったわけです。
まあ亡霊の中でもとりわけこじれていて面倒な魂というわけだ。
でも僕はハインリヒ7世と旅をしてとても楽しかったよ。
それがファンタジーのよいところです。普通に説明したり浄化しようとするとすごく面倒な人を、必要な人に会わせて会話させるだけでふっと軽くできてしまうのです。
僕はハインリヒ7世と一緒に旅をして、歴史というのは本当に勝った者、権力者の側で書かれているということがよくわかりました。本人の意志とは関係なく、権力闘争に巻き込まれ、そのまま消されている人が歴史には無数にいます。
そういう歴史に消された人に光をあてるというのが、今回のファンタジー小説の目的です。
ハインリヒ7世は、それぞれの場所でうまい言葉を言っていたけど、あれは予め考えていたの?
見つかった時の言い訳は予め考えていた。だが、母上や異母弟たちに会った時の言葉はその場のアドリブだ。それぞれに会ったその時、相手の感情に同化し、何を言ったら救いになるか、考えてしゃべった。
そうだったの。
考えてみれば、余は生きている時は相手の感情を思いやったり、何を話せばいいか考えたりすることはなかったかもしれない。生まれてすぐから高い地位を与えられてちやほやされ、周りにいるのは母上以外は皆家臣、人の気持ちを考えるなどということは全くなかった。
それは余も同じだ、殺された貴族やその家族の気持ちなど全く考えていないし、娘が産まれてすぐに王妃とも離婚した。産まれてすぐの子と引き離され、何の権利も与えられずに泣く泣くピレネーを渡った彼女の気持ちなど、何も考えていなかった。
余も王妃の気持ちなど全く考えていない。領土が目的だから、結婚後は遠ざけていたくらいだ。
私は王妃を大事にしていましたよ。大事にというか完全に尻に敷かれて政治も娘の教育も任せっぱなしでしたが・・・・
ここのチャットノベルもファンタジーですが、このように歴史には書かれない人物の生きた証や生き様を伝えられるのがファンタジーのよいところだと思います。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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