クラウディオス・プトレマイオス(5)
文字数 825文字
黄径の理論においては従円と周転円に基づく説明を用いた。水星を除く惑星については、二つの円運動を組み合わせた。惑星の見かけの動きは、惑星の公転と地球の公転(の逆)の合成だが、その各々に一つづつ円運動を割り当てたことになっている。従来の手法に加えて、プトレマイオスは新たに「エカント」という機構を導入して、近似の精度を上げた。エカントを取り入れた円運動はケプラーの法則をよく近似した。黄径の理論は、月や水星といった例外を除くと簡潔で、現象をよく説明した。
おそらく月は地球に、水星は太陽に近過ぎてうまく説明できなかったのでしょう。もちろんプトレマイオスの時代は天動説で、コペルニクスの地動説が出てもケプラーが出るまでは議論が続いていたので、説明は難しかったと思います。
一方、惑星の黄緯の理論は複雑で、特に内惑星の黄緯の理論は理論計算すら難渋を極め、プトレマイオスは精度の悪い近似で済ませている。そして、のちの『簡便表』『惑星仮説』で順次モデルを簡潔にしてゆく。最後の『惑星仮説』のものが今日から見れば最も現象に合うが、後世に影響を及ぼす事はなかった。中世の理論家は、『アルマゲスト』の複雑な理論と格闘し、あるいはインド由来の理論や『簡便表』の不合理な理論を援用することになる。コペルニクスも『アルマゲスト』を元に自身の理論を練り上げたため、その理論では、惑星の軌道は太陽を中心にしながらも、複雑に上下しながら回転することになった。