ヴェンツェル(1)

文字数 1,895文字

リチャード2世の王妃、アン・オブ・ボヘミアの異母兄ヴェンツェルが、怠慢王というすごい渾名を持っていたので、気になって調べてみました。作品集には下の画像から入ってください。
ヴェンツェルの肖像画です。
怠慢王という渾名がついているということは、うちのフアン1世の不真面目王と同じで、たいして活躍もしてないから説明も短いだろう。
いえ、ヴェンツェルの説明は長かったです。
1361年、カール4世の嫡男としてニュルンベルクで生まれた。
私は1350年生まれなので、ヴェンツェルは11歳年下になります。
誕生から1年後に母が亡くなったたが、父からの期待は大きく1373年にブランデンブルク選帝侯位を与えられ、1376年のフランクフルトにおける選挙で選帝侯の全員一致でローマ王に選出され、父の後継者として明確に定められた。
15歳でローマ王に選ばれるなんてすごいじゃないですか。
だが、父が選帝侯の買収資金調達のため自治都市に税金をかけ、それに反対した都市がシュヴァーベン都市同盟を結成したことはヴェンツェルの治世に大きな災いをもたらした。
え、ローマ王の選出に買収資金が必要なのですか?
ルネサンス期には教皇も買収によって選ばれている。
また、1378年に父が亡くなった時、ブランデンブルクは弟のジギスムントが引継ぎ、末弟ヨハンはラウジッツの都市ゲルリッツを相続することになった。従兄弟のヨープストもモラヴィアを領有していたため、ヴェンツェルは分割相続で立場を弱めることになった。
ローマ帝国内も複雑ですね。
余もまた複雑な場所の統治を任されていたが、うまくいかずに父上に叱責され、対立する大きな原因となった。
1379年からローマ王としての親政を開始したが、シュヴァーベン都市同盟に対抗して諸侯も団結して都市との戦争に突入、ヴェンツェルは1382年から1384年にかけて度々都市同盟の解散を命じたが効果なく、両者は規模を拡大させ1388年に衝突した。手をこまねいていたヴェンツェルは翌1389年5月にエーガーのラント平和令を発布したが、都市同盟の解散、賠償金支払いなど不公平な裁定が目立ち、都市に不利な条件だったため都市の反感を買った。
ヴェンツェルがそんなに大変な状況だったなんて知らなかったです。
フアン1世はヴェンツェルと知り合いだったのか?
ええ、まあ、同世代の国王ですので名前ぐらいは・・・
どうも怪しい。まさか特別な関係だったとか・・・
そんなことはありません。私は不真面目王と渾名がついていますが、真面目な人間です。
教会大分裂でもローマ教皇の使命において1379年2月の帝国会議でローマ教皇庁のウルバヌス6世を支持したが、問題を選帝侯達に丸投げして10年以上ボヘミアへ引っ込んでしまったため諸侯からも失望された。
こう言っては失礼ですが、ヴェンツェルはどうもやっていることが中途半端ですね。
ローマ寄りの姿勢は1382年にウルバヌス6世が取り持った異母妹アンナとイングランド王リチャード2世の結婚で深まり、見返りにイングランドの援助でローマで皇帝戴冠式を挙げることを希望したが、都市と諸侯の戦争で帝国が政情不安になっているため実現しなかった。
不運が重なって、ヴェンチェルは本当に気の毒です。
それでも結婚によりプラハ大学とオックスフォード大学の交流が結ばれ両国の文化発展がもたらされたが、それはジョン・ウィクリフの思想がボヘミアに流れ、ボヘミアにおける宗教改革に大きな役割を果たすことになる。
ヴェンツェルは本人がやろうとしたことはほとんど失敗していますが、ボヘミアの歴史は大きく変えていますね。
1395年、イタリア僭主の1人ジャン・ガレアッツォ・ヴィスコンティをミラノ公に叙爵したことで帝国諸侯の不満は限界に達し、ケルン選帝侯・マインツ選帝侯・トリーア選帝侯とプファルツ選帝侯ループレヒト2世がヴェンツェルのローマ王廃位に動き出した。1398年にループレヒト2世は死去したが工作は続けられ、1400年にケルン・マインツ・トリーア選帝侯とプファルツ選帝侯ループレヒト3世(ループレヒト2世の子)がヴェンツェルの廃位を宣言、ループレヒト3世を新たな王に選んだ。ヴェンツェルは廃位を認めず抗議したが、地盤のボヘミアも不安定な状況に置かれていたため軍の動員など有効な手段は取れず、ループレヒトがローマ王、ヴェンツェルはボヘミア王という事実は動かせなかった。以後ヴェンツェルは死ぬまでローマ王を名乗りボヘミアを統治することになる。
私が死んだ後ですが、ヴェンツェルがローマ王を廃位されたなんて、同じ時代を生きた王としてすごくショックです。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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