ボードゥアン4世(1)
文字数 923文字
余は生まれ変わりのフェリペと一緒に時空を超えて若い時の母上や異母弟などに会いに行った。そして最後に余と同じ病に苦しみながらも崇高な生き方をしたボードゥアン4世に会い、その神々しい姿に打たれた。余は亡霊としての姿を失い、フェリペと共に生きることになった。
僕にとってボードゥアン4世は大恩人です。でも彼の父のアモーリー1世が繰り返しエジプト遠征を行い、虐殺も行ったと知った時はショックでした。エルサレム王国という矛盾に満ちた国でボードゥアン4世がどのように生きたか、とても興味があります。
ボードゥアンは父に離縁された母アニェスとともに過ごすことはなく、父の宮廷で育てられた。9歳から、古典学者・アラビア語学者・歴史家でありティルス司教となるギヨーム・ド・ティールに教育を受ける。ギヨームによるとボードゥアンは非常に才能豊かな、魅力ある美少年で、朗らかで、活発で、運動神経も良く、すでに一人前に馬を乗りこなしていた。頭の回転も素早く、人並み以上の記憶力を恵まれて、侮辱を忘れないが、受けた恩恵を忘れることはさらになかった。ラテン文学と歴史にはとりわけ熱中した。
ある日のこと、若い王子はエルサレムの諸侯の子供たちと遊び、夢中になってお互いの手をひっかきあったが、ボードゥアンだけが悲鳴を上げなかった。驚いたギヨームが尋ねると、少年は何も感じないと答えた。そこで初めてボードゥアンが皮膚の病(ハンセン病ともいわれる)に冒されていることがわかり、医者に診せても治療できないことが明らかになった。