やる気の出ない時

文字数 1,415文字

今の日本はなかなかやる気が出たりモチベーションが上がったりというのが難しい状況です。そこでみなさんにやる気の出ない時にどうしていたか聞いてみます。作品のページには下の肖像画から中に入ってください。
またフアン1世の肖像画を使っているのか。
でも、このタイトルで私の肖像画が使われているということは、私がやる気のない人間の代表のように思われているようで微妙な気持ちです。
余は人生の大半を修道士として生きたから、やる気が出ないということがそもそもわからない。修道士は病気でもない限り決まった日課に従って毎日過ごすのが当たり前だった。やる気とかそういうことは関係ない。
余も忙しく戦っている間に人生は終わってしまった。
僕の人生で1番やる気がなかったのは10歳の時です。父さんが迎えに来てくれるという望みもなくなり、修道院での毎日の生活が嫌で嫌でたまらなかった。やる気なんてまるでなかった。
あの頃のフェリペは何日も食事を食べなかったり、仕事をさぼったり、危険な状態だった。私は修道院長に提案して勉強を教えることにした。
勉強をするようになったらやる気が出たのですか?
うん、僕は新しいことを知るのが楽しくて、それからはもう食事をきちんと食べたし、仕事もさぼらなくなった。
私だって最初からやる気のない人間ではありませんでした。最初の妻マルタの前ではよく怒っていました。自分はこうしたかったのにうまくできなかったから怒る、つまり20代前半ぐらいまでは普通にやる気もあったのです。マルタは優しかったので私は甘えていたのかもしれません。
でも2番目の王妃ビオランテはそうではなかった。
そうなんです。気の強い妻に対して何も言えず、次第に何もかもどうでもよくなったのです。私は狩りに熱中しました。タカは私によくなつき命令通りに動いてくれます。朝から晩まで狩りのことばかり考え、政治は王妃とその寵臣に牛耳られるままになってしまいました。
現代の日本でもゲームなどに夢中になり過ぎて日常生活がうまくいかなくなったという人はたくさんいます。現実社会はうまくいかないこと、おもしろくないことがたくさんあるけど、ゲームの世界は展開も早く、自分の腕前でどんどん変わっていきます。
そうなんですよ。狩りも自分のというかタカの腕前がよければ次々に獲物が獲れます。これはもう本当にすっきりします。
だが王国の財政が傾いてもそのままにして狩りに熱中するのはやりすぎであろう。
人間は否定され続けていた時に自分を認めてくれるものに出会うと夢中になってしまう。余の場合は狩りではなく教皇の言葉に夢中になってしまった。父上は何をやっても認めてくれなかったけど、教皇は余を正しく評価してくれると信じてしまった。でもそれが間違いだった。
教皇はハインリヒ7世をそそのかして反乱を起こさせた。本当にひどいと思う。
否定され続けた時、やる気を失った時などに、人間は安易に認めてくれ、うまい話をする者に簡単に騙され操られてしまう。心が弱くなった時ほど注意が必要だ。
その通りだと思います。
現代の日本には、我々の時代には想像もつかないほど、生き方は自由になり、可能性も広がっている。でもだからこそ心が折れ、やる気を失って、言葉巧みに相手を操る者に騙されることも多い。
やる気の出ない状態が長く続くともうそれが当たり前になってしまったり、現状をすぐ変えてくれるものに頼りたくなる、でもそれは危険なことでもあるようです。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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