やる気の出ない時
文字数 1,415文字
私だって最初からやる気のない人間ではありませんでした。最初の妻マルタの前ではよく怒っていました。自分はこうしたかったのにうまくできなかったから怒る、つまり20代前半ぐらいまでは普通にやる気もあったのです。マルタは優しかったので私は甘えていたのかもしれません。
そうなんです。気の強い妻に対して何も言えず、次第に何もかもどうでもよくなったのです。私は狩りに熱中しました。タカは私によくなつき命令通りに動いてくれます。朝から晩まで狩りのことばかり考え、政治は王妃とその寵臣に牛耳られるままになってしまいました。
現代の日本でもゲームなどに夢中になり過ぎて日常生活がうまくいかなくなったという人はたくさんいます。現実社会はうまくいかないこと、おもしろくないことがたくさんあるけど、ゲームの世界は展開も早く、自分の腕前でどんどん変わっていきます。
人間は否定され続けていた時に自分を認めてくれるものに出会うと夢中になってしまう。余の場合は狩りではなく教皇の言葉に夢中になってしまった。父上は何をやっても認めてくれなかったけど、教皇は余を正しく評価してくれると信じてしまった。でもそれが間違いだった。