亡霊本人よりもその父や子の方が有名になっている

文字数 1,131文字

『スペイン旅行の写真』の中で、サラゴサにある五つ星ホテル、レイナ・ペトロニーラについて紹介しました。作品集は下の写真から入ってください。
どうも亡霊本人よりもその父や子の方が有名になっている気がします。
我が娘ペトロニーラは1歳で女王となり、バルセロナ伯と結婚してアラゴン・バルセロナ連合王国の基礎を作った。名前の響きもいいからホテル名にも使われるのだろう。
余の父上フリードリヒ2世は世界史に必ず出てくる。
余の長男ハイメ1世は征服王と呼ばれ絶大な人気を誇っている。
私の娘ヨランド・ダラゴンはそれほど有名ではないけどシャルル7世関係の本や漫画には必ず登場します。
本人よりも父や子の方が有名になっているのは、そもそも活躍して人生を全うした人は亡霊にならないからです。亡霊になるのは挫折や不本意な体験をして強い感情が残った人だけです。
確かにそうだ。強いマイナス感情がなければ普通は亡霊にはならない。
僕はどうなるのですか?僕は子供の頃修道院に入れられたことは不満だったけど、それ以外は順調でいい人生でした。
お前は例外だ。私のそばにいたいがために、あえて地上に残る道を選んだ。
でも歴史の中では活躍して有名になった人よりも不本意な生き方をしたりコンプレックスを持ったまま亡くなったりした人の方がずっと多いと思います。もちろん有名で活躍した人はすごいけど、歴史はそれだけではない、むしろ亡霊になってしまう人の生き方を知ることで本当の歴史がわかるような気がします。
よいことを言っているではないか。私たちの時代、社会や人間の暮らしは大きく変わった。だがそれだけ争いも大きくなり、人間はますます残酷になった。歴史の教訓はまったく生かされていない。
亡霊になった人は活躍するチャンスを奪われテ不本意なまま生涯を閉じています。チャンスさえあれば違った人生を送れたはずです。その父や子が有名になっているのですから。なぜチャンスを奪われたのか、その背景を知ることでよりよい生き方ができるようになるはずです。
亡霊にとって参考になる、うれしいことを言ってくれる。
亡霊になった人の人生を変えたり、有名にしたりすることはできません。でも僕たち人間は亡霊との関わり方で自分の人生を変えることはできます。僕と異母弟のマルティンは本来なら憎み合ったりぎくしゃくする関係です。でもラミロ2世、ペドロ2世、フアン1世の3人が入ってくれたおかげで、関係は随分変わりました。
私はマルティンの話を聞いていて一緒に泣きました。生きている時に投げやりになって感情も捨てていましたが、再び人間らしい感情を取り戻すことができました。
有名でなくても不本意な生き方をしていても、彼ら亡霊から学ぶことはまだまだたくさんあると思います。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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