敵を抹殺した者が歴史を動かす

文字数 1,189文字

今日はミゲル・セルベートに関するエッセイで、カルヴァンとの手紙のやり取りの部分を書いたのですが、敵を残酷に抹殺した者ほど結果的に有利になって歴史を動かしているという不条理について考えました。作品のページには下の写真から入ってください。
このテーマでは、余はまさに敵を抹殺して歴史を動かした者になる。『ウエスカの鐘』の粛清を行ってたくさんの貴族を殺し、結果余の血筋がアラゴンに長く流れることになったのだから。
『ウエスカの鐘』の粛清は貴族の反乱に悩まされていたラミロ2世が修道院長となった昔の師匠の所に使者を送ったところ、修道院長はキャベツ畑に使者を連れて行ってそこで大きくなり過ぎたキャベツを切って、この光景を王に伝えるようにと言ったそうです。スペイン語のパネルに書いてありました。
どのような理由があっても、同じキリスト教徒の貴族を殺したということで、余は長い間、罪の意識に悩まされてきた。
第4回十字軍はエルサレムではなくコンスタンティノープルへ向かい、キリスト教徒であった市民を多数虐殺して東ローマ帝国を滅ぼし、新しくロマニア帝国を建国した。教皇は最初は彼らを非難して破門にしたが、結局は破門を解いて許している。
正しくないことをしても、それが大きな流れになってしまえば見て見ぬふりをするのでしょうか?
同じ教皇がアルビジョア十字軍も呼びかけ、この時は徹底的に攻撃を行い、たくさんのカタリ派の者が処刑されている。
余はそのカタリ派を巡る争いに巻き込まれて戦死した。カタリ派に味方をしたと言われ、破門もされた。
もし第4回十字軍が思うような結果にならず、矛先を変えて異端にしていたカタリ派を攻撃したとしたら、酷い話ですよね。敵にした者を残酷に殺した方が歴史に名前が残り、権威が高まって尊敬されてしまう。
人間はそれを繰り返してきた。私はキリスト教徒の残虐行為に疑問を持ち、剣を握るのをやめて修道士になった。その後何度も生まれ変わっているが、敵を抹殺した者が英雄や教祖、権力者として認められ、歴史の流れを変えているということはずっと変わらない。
僕の生きている時代も、ルネサンスを経てヒューマニズムが言われながら、実際には残酷な時代です。スペインではルター派にたいする迫害が激しく、改宗したユダヤ教徒やイスラム教徒も狙われていました。密告や拷問が日常茶飯事です。残酷な拷問や処刑を行えば財産を没収することができて得をする者がいる、そういう仕組みが出来上がっていました。
現代でも敵を抹殺して歴史を動かす独裁者の支配する国があります。日本はそこまでいかなくても、やっぱり人を攻撃したり支配する者が得をする雰囲気はなくならず、いじめやパワハラなどが起きています。
敵を抹殺したり、攻撃をして得をするような価値観を否定するような思想はなかなか生まれないようだ。だからこそ私は転生を繰り返しているのだが・・・
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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