シュテファン・ツヴァイク(7)
文字数 924文字
『人類の星の時間』は1927年の初版では「ウォーターローの世界的瞬間」、「マリーエンバートの悲歌」、「エルドラード(黄金郷)の発見」、「壮烈な瞬間」、「南極探検の闘い」の5本構成であり、これらのエッセイ5本は1912年から1926年までそれぞれ雑誌や新聞で掲載されていたエッセイだった。初版は1928年末までに13万冊も売れる大成功を収め、1936年に発売された短編集では初版に含まれた5冊の他、「ビザンチンの都を奪い取る」と「ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルの復活」が新しく収録された。
1940年には英語訳がThe Tide of Fortuneという題名で出版され、「壮烈な瞬間」と「神への逃走」以外の12本が収録された。一方、ツヴァイク死後の1943年に出版されたドイツ語版では「キケロ」と「ウィルソンの失敗」以外の12本が収録された。1964年のドイツ語版は14本すべてが収録されたが、それ以降に出版された諸国語訳は引き続き「キケロ」と「ウィルソンの失敗」以外の12本収録となっているものが多い。
香港の作家馮は題名のSternstunden(星の時間)という語に占星術における意味があると指摘した。特定の時間における星の位置が世界の出来事に影響するため、「星の時間」という語が用いられ、のちに「偉大な時間」への隠喩なったという。馮によれば、ツヴァイクは作中で占星術に言及しなかったが、「ウォーターローの世界的瞬間」などで運命の力を強調した。