ヴェンツェルが仲間入りする

文字数 1,490文字

今日は私フアン1世から提案があります。私の友人ヴェンツェルを私達の仲間に入れたいと・・・
ヴェンツェルって、最近話題になったボヘミアの怠慢王ヴェンツェルのことだろう。余は反対だ。ここは由緒あるアラゴン王家の者とその関係者だけが入れる場所だ。
私の友人ということでそこをなんとかお願いします。
なんか突然とんでもない意見が出てきましたが、とりあえず作品集には下の画像から入ってください。
人の悪口はあまり言いたくないが、ヴェンツェルの場合は性格の悪さが肖像画からも滲み出ている。
性格の悪さだけならともかく、余は聖職者を殺しているという罪が気になる。余も子供の頃から修道院に入れられ、戦う術を知らずに生きてきた。無抵抗の、しかも後に列聖されるような立派な人物を拷問にかけて殺すとは、その罪はあまりにも大きい。
まさか死ぬとは思わなくてつい・・・
ヴェンツェルは心の底からの悪人ではありません。単純で気が短くて愚かで怠惰ですぐに酔っぱらって・・・
よいところが何もなさそうだ。
でも、狩りの腕前は凄いです。私は手紙で読んでびっくりしました。
フアン1世は余の狩りの腕前を手紙で知らせてもなかなか信じてくれなかった。だから余は使節を送って狩りの成果を報告してもらうことにした。
使節から話を聞いてびっくりしました。私は狩猟王という渾名も持ち、狩りの腕前には自信があったのですけど、ヴェンツェルにはかないませんでした。
祖国が大変な状況だというのに、若い者は全く何を考えている。
でも14世紀の終わりは他の国は王位を巡っての激しい争いがあったり、イングランドとフランスの百年戦争があったりと大変な時代でした。のんびりしていたのはアラゴン王フアン1世くらいです。
あ、でもアラゴンは父上がカスティーリャのペドロ1世と戦っていたので、フランスとエンリケに味方して兵も出していました。
余はイングランドに味方をして戴冠式の費用を出してもらおうと思い、イングランドのリチャード2世と妹のアンナ(アン・オブ・ボヘミア)を結婚させた。結局余は戴冠することはできなかったが・・・
イングランドに味方をしたということは、フアン1世!ヴェンツェルはアラゴンの敵ではないか!
私は妻が2人ともフランス人でしたし、フランスの洗練された文化が大好きでした。あ、百年戦争の時はイングランドとフランスが戦っていたから、イングランドに味方したボヘミアはアラゴンの敵になりますね。
そんなことも気づかずにボヘミア王ヴェンツェルと付き合っていたのか?
ヴェンツェルからの狩りについて書いてある手紙を読むのが楽しくて、戦争のことはすっかり忘れていました。
ラミロ2世、どう思う?こんな評判の悪い人物を仲間に入れていいのか?
難しい問題だ。修道院にいる時は、悩み迷える者はみな暖かく受け入れるように言われてきた。だが、王になった時に昔の師匠に相談したら、成長しすぎて飛び出したりはみ出したキャベツは刈り取るようにと教えられた。
ここに集まった者はみなはみ出したキャベツだ。高貴な生まれながら過ちを犯し、救われない人生を生きて死んでからも亡霊としてさまよっていた。まっとうに生きられた者は亡霊になどなったりはしない。だが余はフェリペと出会い一緒に旅をする中で自分の人生を考え、受け入れることができた。その時が来るまでここにいればよい。
ハインリヒ7世、ありがとうございます。ほら、ヴェンツェルもお礼を言って・・・
別に余は仲間に入りたいと思ったわけではない。フアン1世が熱心に勧めるから様子を見に来ただけだ。
こうしてボヘミアの怠慢王ヴェンツェルも仲間入りすることになりました。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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