ティコ・ブラーエ(1)
文字数 1,253文字
彼はデンマーク領のスコーネで生まれた。生前から天文学者・占星術師・錬金術師として著名であり、「初めて、正確な経験的事実を切なる情熱を持って追い求めるという、現代天文学にかなう精神を持った人」と評される。彼の調査は当時最良の観測よりも5倍ほど正確であった。
ティコはデンマーク有数の有力貴族家系の出であり、総合的な教育を受け、天文学と正確な観測器具の製作に関心を持った。天文学者として、コペルニクス体系に見出した幾何学的有用性を、プトレマイオス体系の哲学的有用性と共に、彼自身の宇宙モデルであるティコ体系に組み合わせることに取り組んだ。
また、彼は重要な天文学者の中で望遠鏡を使用せず肉眼による天体観測を行った最後の人物である。1573年の著作『De stella nova(新星について』でティコは天球の不変というアリストテレスの信条に反論した。正確な観測によって「新星」(ティコが観測した現象は現在超新星に分類されるものだったと言われる)、特に1572年のそれ(SN1572)には月軌道より低い場所で発生する現象に予想される視差が検出されないことを示した。
新星は当時まで、大気中に存在する尾を欠いた彗星などであると考えられていたが、このティコの観測結果によってそれが大気や月よりも高い(遠い)場所の現象であることが示された。彼は同様の観測結果を用いて、彗星もまた当時考えられていたような大気中の現象ではないことを示し、それが恐らく不変の天球を通過していると見るべきことを主張した。