異世界転生ファンタジー?

文字数 1,395文字

今日は余を主人公とした小説についての重大発表がある。説明に時間がかかるので、スペイン語で読み上げてもらうのはやめておく。
ラミロ2世を主人公にした小説については、petoronilaの部分をクリックして作品のページに行き『ウエスカの鐘』と『ラミロ2世の亡霊』の部分を参考にしてください。
最近日本では異世界転生ファンタジーとかいう分野の小説が流行っているようだが、異世界転生ファンタジーとは何か、余にわかりやすく説明してくれ。スペイン語は使わなくてよい。そなたの力では難しい言葉は説明できないであろう。
おっしゃる通りです。では日本語で説明させていただきます、陛下。異世界転生ファンタジーというのはわかりやすく言えば主人公、その多くは現実世界では引きこもっていたりいじめられたりして辛い思いをしているけど、何かのきっかけで異世界に行ってしまい、その世界では持っていた能力を使って大活躍する、というタイプの小説です。
そなたが余を主人公にした小説は「異世界転生ファンタジー」だと言って宣伝することはできるか?
無理です!(きっぱり)あの話は歴史小説として書いたのです。分野が違い過ぎます。
だが少年は現実世界に不満を抱いていた。異世界転生ファンタジーの主人公としてぴったりではないか。
僕は金持ちの家の子として生まれたのに、母が亡くなり、父さんが意地悪なあの女と結婚したために修道院に入れられました。現実世界に不満は抱いていたけど、別に異世界に行きたいとは思っていません。
そなたの最大の望みはなんだ?
こういう時、ファンタジー小説の場合は魔法使いとか出てきて願いを叶えてくれるのよ。
僕の最大の願いは父さんが迎えに来てくれてまた一緒に暮らすことです。継母が意地悪しないように、そこは魔法でなんとかしてもらって・・・
随分現実的な願い事であるのだな。だが余は魔法使いではなく、亡霊であるからそなたの願いを叶えることはできなかった。
そうよ、ラミロ2世の亡霊はただ自分のことをベラベラしゃべるだけで、主人公の願いを叶えることなどできはしない。ファンタジーにはならない話よ。
でも僕はラミロ2世に会ったおかげで歴史に興味を持ち、たくさんの本を読みました。
彼の勉強熱心な態度に私は深く感動した。そして私は医者や研究者をやっている友人に手紙を書いた。彼を私の友人に託そうと考えたからだ。
修道院での辛い生活に絶望していた少年が、異世界の住人(亡霊)に出会って影響を受け、自ら人生を切り開いていこうとする。亡霊との出会いによって、少年の住む世界は変わった。これは立派な異世界転生ファンタジーではないのか。
確かに僕はラミロ2世などの亡霊に出会って考え方が大きく変わりました。でも僕が修道院を出て行く場所は現実にある場所です。異世界に行くわけではありません。
あの小説は少年の成長物語として読むことはできます。でも異世界転生ファンタジーにすることは無理です。
そうか、異世界転生ファンタジーにはならないのか。それは残念だ。だが、あの小説は作者もまだ気づいてないが、輪廻転生が大きなテーマとなっている。
輪廻転生ですか?
そう、そなたの父が話した生まれ変わりが大きなテーマとなっている。輪廻転生だ。


ちょっと待ってください。あんまりネタバレしないでください。
よくわからにゃいが、歴史小説を異世界転生ファンタジーにするのは、無理があると思うにゃー。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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