ニコラウス・コペルニクス(8)
文字数 1,024文字
アルフォンソ天文表によってそれぞれの惑星が特定の時点にどの位置にあるかということと、一日にどれだけ進むかという情報が示された。当時は古代ローマ帝国時代の西暦150年頃成立したアレキサンドリアの天文学者プトレマイオスが作った天文体系『アルマゲスト』に基づいた天文計算が行われていた。
アルフォンソ10世には、天文学者の仕事を見て「惑星の運動は複雑すぎる」と述べたという伝説があり、そこから当時の天文学者がそれぞれの惑星に周転円を複数用いたという神話が生まれ、天動説の複雑さの例として通俗書に書かれたが、実際にはアルフォンソ表の体系全体は「それぞれの惑星に独立した周転円は1つしかない」という考えで計算されていた。もしも惑星の周転円を2つにしたら中世の数学者には複雑すぎて計算できなかったためである。従って、コペルニクスが地動説を考えた理由として「プトレマイオスの天文学が複雑すぎると考えた」とすることはできない。
『アルマゲストの要約』は「要約」以上の著作で、バッターニーやジャービル・ブン・アフラフなどその後の発展も大いに取り入れ、時に『アルマゲスト』の誤りを正した。構成はユークリッド的に論理の流れを重視しており、『アルマゲスト』の体系をより簡潔かつ明瞭に紹介していた。コペルニクスはこの本で、プトレマイオス天文学の理解を深めた。