ティコ・ブラーエ(22)
文字数 1,124文字
ティコの科学観は正確な観測に対する彼の情熱に突き動かされたものであり、生涯にわたって観測器具の精度向上を探求した。彼は重要な天文学者の中で望遠鏡の力を借りなかった最後の人物であり、彼のすぐ後の世代にはガリレオ・ガリレイを始めとした天文学者が空へ望遠鏡を向けた。肉眼による観測の限界を克服すべく、ティコは既存の観測器具(六分儀と象限儀)の精度向上に多大な努力を払った。彼は大型の六分儀や象限儀を設計し、これらによってより高い精度での観測を可能とした。観測器具の正確さによって、彼はすぐに風の影響と建物の動きに気付き、観測器具を地下の岩盤の上に直接据え付けるようにした。
ティコの恒星と惑星の位置の観測はその質・量、双方において特筆に値する。観測精度は1分単位に近づき、彼の天体の位置の観測結果は彼以前と同時代のあらゆる観測者よりも正確となった(同時代の天文学者ヘッセン=カッセル方伯ヴィルヘルム4世のおよそ5倍の精度をたたき出している)。ティコは星表Dにおいて「ティコは以前の星表作成者を遥かに上回る精度、圧倒的規模を達成した。星表Dは観測器具と観測と計算の技術の前例無き合流を示している。これら全てによって、ティコは記録した何百もの星々の記録を1分単位(月の見かけの直径の30分の1程度)の正確さで配置することができる!」と主張している。
彼は一貫して自身の天体位置予想の精度のレベルが実際の位置から1分以内の場所を示すことを志し、またそのレベルを実現したと主張していた。しかし実際には彼の星表の示す座標はそこまでの正確さではない。彼が最後に出版した星表の誤差中央値は約1.5分であり、全体のおよそ半分だけがその精度を上回る。座標の全体的な平均誤差は約2分であった。彼の観測ログに記録されたような恒星観測はより正確であったが、使用する観測器具によって32.3秒から48.8秒までの様々な誤差が生じ、ティコの出版した星表ではいくつかの恒星の座標に3度ものシステマティックな誤差が含まれていた。この原因は例えば、古代の誤った視差の値の適用と、北極星の屈折の無視である。ティコが最後に出版した星表において、彼が雇った書記が誤写をしていることが、たびたびにわたり更に大きな誤りの原因となった。