クラウディオス・プトレマイオス(15)
文字数 905文字
『視学(光学)』は『アルマゲスト』や『惑星仮説』よりも後に書かれたとされる。根拠の一つは、これらの書における、月の錯覚や屈折の議論の比較の議論である。『アルマゲスト』第1巻では、この現象を大気による屈折とし、誤って「水の中にあるものは屈折で大きく見える」としている。『惑星仮説』では、さらに心理的な要因が加味され、『視学』では純粋に心理学的な効果だとしている。また、屈折の議論もずっと正確で洗練されている。古代末期から中世にかけて、『アルマゲスト』と同様の誤った屈折の理解は、広く見られる。
天文学書『アルマゲスト』幾何学的な抽象と、数値的な計算を結び付けるための強力な道具として用いられたのが、「弦の表」、すなわち円弧の長さと弦の長さの間の関係を表にしたものである。『アルマゲスト』では、これをヒッパルコスの発明としている。また『アルマゲスト』には「弧の表」の様々な性質、例えば加法定理に相当するものなども示されている。ただし中世以降は、プトレマイオス以前に分岐して独自に発展を遂げた、インド流の三角法に置き換えられていく。
また、(球面幾何の)メネラウスの定理に基づく球面三角法も展開されている。インドには球面三角法は生じず、中世に発展した球面三角法は『アルマゲスト』とメネラウスの『球面幾何』が起源である。ただし、10-11世紀には、正弦定理などに基づくより洗練された形式が編み出され、『アルマゲスト』の手法を置き換えることになる。