クラウディオス・プトレマイオス(4)
文字数 1,005文字
プトレマイオスの著作『惑星仮説』は、天体計算の理論の背景にある宇宙論を説いたものである。これを元に天体の運動を再現する模型を作ることができる程に、具体的に数値まであげながら、天体の軌道の物理的な構成と運動の機構を説いた。
後世への影響では、最も中核にある内容を含み、かつ網羅的であった『アルマゲスト』が第一であった。古代から中世を通じて、多くの批評や修正はなされたが、天文学の最も重要な著作であり続けた。次いで『簡便表』も盛んに用いられ、中世の「天文表」(天文計算のためのハンドブック)の作成に役立てられた。一方、中世の宇宙論の書に採用された天体の配列順序や数値の出所をたどると、多くは『惑星仮説』に行きつく。だが、『惑星仮説』はラテン語訳が16世紀から17世紀にかけてやっとなされることからもわかるように、影響は間接的なルートを経たと思われる。
プトレマイオスよりはるか以前から、古代ギリシアの思索家たちは、天体の動きを説明する仕組みについて、地動説から天動説まで、多様なアイデアを生み出していた。また、紀元前4世紀のエウドクソスは、地球を中心とする球体の回転の組み合わせで、天体の動きを説明しようとした(同心球体説)。アリストテレスは、エウドクソスの理論に基づいて、自らの宇宙論を組み上げた。
しかし、バビロニアの数理天文学の算術的な方法の方が、数値的な予測にははるかに優れていた。そこでバビロニアの長所(算術やデータ、天文定数)を取り入れつつも、幾何学的な説明を主軸にした独自の天文学がヒッパルコス(BC190年?ーBC120年?)らによって生み出された。それをさらに発展させたのがプトレマイオスであった。円運動に基づき、地球中心で天を球体としている点はエウドクソスと同様だったが、より技巧的な仕組みを導入した。また、幾何学的な説明を数値に結びつけるために「弦の表」を導入した。これは、円弧の長さと弦の長さ間の関係を表にしたもので、今の三角法の起源である。