カスペの妥協(6)

文字数 1,662文字

カスペの妥協の続きです。作品集には下の画像から入ってください。
各国代表者として法律に精通した者たちが各3人ずつ任命され(1412年2月15日、アルカニス)、彼らはサラゴサ近郊のカスペに集まって正当性主張者らを吟味した。代表者は以下の人物たちである。
カスペの会議ではなくカスペの妥協という名前がついていることが微妙ですね。
私の死後そんなに大変なことになるとは思いませんでした。
代表者は次の9名である。ウエスカ司教ドメニク・ラム、ベネディクトゥス13世の全権大使フランセスク・デ・アランダ、アラゴン王国のコルテス代表ベレンゲル・デ・バルダイシー、タラゴナ大司教ペレ・デ・サガ^リガ、バルセロナ評議員ベルナト・デ・グアルベス、カタルーニャのコルテス代表ギリェン・デ・バセイカ、ポルタセリ修道院長ボニファシ・フェレール、ドミニコ会派聖職者ビセンテ・フェレール(説教師、ボニファシの兄)、ペレ・ベルトラン(法に精通していることでバレンシア代表になった)
バレンシア代表でボニファシ・フェレールとビセンテ・フェレールが兄弟で出ているのがちょっとずるいと思いました。そのほかにベネディクトゥス13世の全権大使が加わって3人がフェルナンド1世に投票すればそれだけで3票集まってしまいます。
1412年6月28日、6票(アラゴン3票、バレンシア2票、カタルーニャ1票)を獲得したカスティーリャ王子フェルナンドが、フェルナンド1世として即位した。
ベネディクトゥス13世の思い通りになりましたね。そしてこの時からアラゴンは248年続いたバルセロナ朝が終わり、トラスタマラ朝が始まりました。
余がアラゴン王になった時、修道院育ちで政治に疎く戦いに出ることもできない余を貴族達は馬鹿にして各地で反乱が起きた。余はウエスカに大きな鐘を作るという名目で貴族達を呼び集め、1人ずつ部屋に入れて反乱に加わっていた者はその場で斬首し、その首を鐘のように高く積み上げた。貴族達は余を怖れ、反乱はピタリと止まった。
余の父上、サンチョ・ラミレス王は理想の国を作ろうとした。ローマに巡礼に行って、ローマ風の教会儀式をアラゴンに取り入れた。ペドロ兄上が王となり、アルフォンソ兄上が軍隊の最高指揮官、そして余が修道院長となって国を支え、アラゴンの発展を夢見ていた。だが皮肉にも兄上たちは後継者を残さずに亡くなり、余が王位を継ぐことになった。
余の娘ペトロニーラと結婚したバルセロナ伯ラモン・バランゲーはよくできた男であった。そしてアラゴン連合王国が成立した。アラゴンとカタルーニャ、どちらが上というわけではなく独立国としてそれぞれ議会を持ち、対等であった。
バルセロナ朝アラゴンは様々な危機がありながらも、アラゴンとカタルーニャ、そしてバレンシアも加わった連合王国として発展してきました。でもカスペの妥協で、カスティーリャ王子、トラスタマラ家のフェルナンド1世が選ばれたことで、いままでのバランスは崩れ、アラゴンはもうアラゴンではなくなってしまいます。
私が後継者を残さなかったばかりにこんなことになって申し訳ないです。
カスペの妥協の頃は政治も宗教も乱れていました。ラミロ2世の父サンチョ・ラミレス王の時代のように教皇が絶対的な権威を持っていた時代と異なり、対立教皇が出て、支持者集めに奔走するようになりました。聖職者、王侯貴族、誰もが利益を求めて行動するようになり、裏切りや腐敗が横行し、素朴な信仰心や信頼関係は失われてしまいました。そんな時代にアラゴンの新しい王が選ばれ、アラゴンは全く違う国になってしまいました。
僕は今16世紀のスペインに生きています。異教徒への追放令が出て、異端審問が厳しくなっているスペインでは、両親がユダヤ人である僕は命の危険すら感じています。スペイン、その前のアラゴンがこのような国になってしまった原因の1つがカスペの妥協にあるとしたら悔しいです。聖職者やそれぞれの国の利害で妥協で王を選ぶことがなければ、アラゴンは違った国になっていたように思うのです。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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