占星術と医学

文字数 1,355文字

先日、ミゲル・セルベートに関するエッセイの中で、占星術について書いたので、占星術と医学に関して話題にしてみたいと思います。作品集には下の写真から入ってください。
占星術とか錬金術とか、そういう類のものは、いつの時代でもキリスト教では禁止されていたはずだが・・・
そうですね。でもルネサンス期にはかなりブームになっています。
私は医者である叔父から占星術も習っている。基本的なことを教わっただけだが、占星術は医者にとって必要な教養でもあった。
どうして占星術が医者にとって必要なのですか?
医者は開業医となるだけでなく、王や貴族、高位聖職者の侍医になることも多かった。彼らの病気や怪我の手当てをするだけでなく、出生時のホロスコープを作ったり、戦争や疫病の時期を予言できれば有効なアドバイスができ、そういう人材が求められていた。
ホロスコープってなんですか?
その人物の生まれた時と場所から、その時の星の位置を調べ、星の位置や角度からその人物の星からの影響、持って生まれた性質や運命、才能などを知ろうとするものだ。ホロスコープの作り方は難し過ぎて私にはよくわからないが・・・
星の動きから人間の運命を知るという考え方はやはりルネサンス期に流行したヘルメス主義の影響も大きいと思います。
そのヘルメス主義というのは、宗教改革などと似ているのか?
いいえ、宗教というよりも知識人の間で流行った思想です。『ヘルメス文書』という本が部分的に見つかって、それがラテン語に翻訳されたことでブームになりました。
失われた本が発見されたとか、そういう話、僕は大好きです。
『ヘルメス文書』は紀元後にエジプトで編集された書物ですが、なぜかルネサンス期の人はそれが紀元前、モーゼの時代より前に書かれた人類最古の書物と信じていました。失われた叡智がまとめられた本と信じ、その中の『大宇宙と小宇宙は互いに対応している』という考えに引きつけられました。小宇宙は人間のことです。
すごく興味深い話です。『ヘルメス文書』とか占星術は大学でも勉強できますか?
それは難しいだろう。大学の正規の授業では、教会が禁止していることは行わない。
でもミゲル・セルベートという人は教会が禁じている占星術の授業を大学で行っていました。気象学や天文学を含む数学という名目でした。火星の食、つまり月の位置で欠けて見える日を計算し、その時に戦争やペストが起きると予言しました。
そんなこともわかるなんてすごいですね。戦争やペストの起こる時が予め知っていれば、被害は最小限に抑えられるかもしれないです。
でもこの授業は学部長に止められて、裁判にもなっています。
そうなんですか。
教会は禁止しましたが、占星術はますます広まっていきます。もっと後の時代になりますが、有名なノストラダムスも医者であり占星術師でした。彼はフランス王アンリ2世の死やその後彼の子が次々王になることを予言して当時から有名でしたが、その後の私たちの時代に関係することも予言していてブームになっています。
すごいですね。
ただ予言は詩で書いてあってどのようにも解釈できるので、本当に本人がそれを意図して書いたかはわからないです。
今日の話は余が口を挟む余地が全くなかった。
でも僕にはすごく興味深い話だったよ。
今日の話はこれで終わりにします。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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