その説は人間を丸太や彫像のようにしてしまう

文字数 1,579文字

今日はミゲル・セルベートに関するエッセイの中で、ジュネーブの裁判でも問題にされ、7年前にセルベートが手紙の中でカルヴァンの予定説について痛烈に批判していたことを書いたので、そのことについて話題にします。作品のページには下の写真から入ってください。
その問題の批判についてスペイン語でも紹介します。スペイン語の部分はラミロ2世に読んでもらいます。
Comienza la tercera fase del proceso consistente en una discusión escrita entre Calvino y Servet.
3回目の裁判が始まり、カルヴァンとセルベートの長い議論の様子が記録に残っている。
Todas las tesis de Calvino presentadas a Servet eran contestadas con comentarios exasperados.
そこにはカルヴァンがセルベートに自分を怒らせた手紙のコメントを見せたことが書かれていた。
En uno de ellos Servet afirma que la doctrina de la predestinación de Calvino reduce al hombre a tronco y estatua.
その手紙の1つで、セルベートはカルヴァンの予定説の教義について、人間を丸太や彫像のようにしてしまうと断言していた。
16世紀のスペインにはカルヴァンの考えはあまり入ってこなかったが、ルターの考えはかなり入って来ていた。
僕の生まれたのは1518年、ルターの宗教改革が始まった1年後です。
スペインとドイツの間には羊毛の加工などの交易があったから、ルター派の学者や書物はかなりスペインに入ってきた。そしてスペインではルター派への厳しい迫害が行われた。スペインの異端審問所の残酷さは有名で、どんな酷い目に合ってもスペインで拷問されるよりはマシと言われたぐらいだ。
そしてスペインではルター派だけでなく、改宗したユダヤ教徒、イスラム教徒に対する迫害もありました。
カルヴァンはフランス人で最初はパリの大学で学んでいましたが、独自の考えを持って本を出してからは危険を感じてスイスに亡命しています。教皇を中心としたカトリックの制度を批判して聖書中心の教義を展開したところはルター派と同じですが、カルヴァンはさらに神の予定説を出してこれはカルヴァン派独自の考えです。
神は予め救われる人間とそうでない人間を決めているという考えか。それは極めて危険な考えだ。
どうしてですか?
カトリックのキリスト教社会で、我々ユダヤ人は異教徒として様々な迫害を受けてきた。ルターの宗教改革が始まり、キリスト教徒の中でも分かれて争うようになった。争いの中ではいかに多くの信者を集めるか、数で優位に立つことが極めて有効である。どうしたら手っ取り早く多くの信者を集めることができるかわかるか?
死後の救いと現世での利益、その2つを結び付けることです。十字軍の時に教皇はそれに参加すれば神に救われて天国に行かれ、さらに豊かな土地も得られると保証しました。だからあれほど多くの人間が熱狂し、そして残酷なことが行われました。
予定説もまた同じように神の救いと現世利益を結びつけている。救われるかどうか保証はしなくても、労働に励んで成功すればそれが神に選ばれた証になると信じるようにした。選ばれた人間とそうじゃない人間に分け、敵対する者を残酷な方法で殺せば、ますます教祖はあがめられ信者は集まる。
怖ろしいことですね。
カルヴァンの考えはキリスト教徒でなくても世界中に広まっています。自分が救われる側、正義の側にいると信じて反対する者を徹底的に迫害する、世界中あらゆる場所でそれは行われ、今も続いています。
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登場人物紹介

ラミロ2世。アラゴンの王様だったがいろいろあって今は亡霊となっている

ペトロニーラ。アラゴン女王の名前を使っているがただの主婦。小説家になりたいと思っている。

フェリペ、16世紀のスペインの修道院で暮らすユダヤ人の少年。父親に捨てられて心を閉ざしていたが、ニコラス医師の指導で本来の明るさを取り戻す。まじめで勉強熱心。

ニコラス医師。修道院内の病院の医師で、孤児たちに勉強も教える。心を閉ざしていたフェリペを気にかけ、特別にラテン語や歴史、医学の基礎なども教える。

フアン1世。不真面目王と呼ばれ業績を残さずに死んだが、娘のヨランド・ダラゴンが勝利王シャルル7世を支えている。

ハインリヒ7世。皇帝フリードリヒ2世の長男でアラゴンの血も引いている。父と対立して反乱を起こし降伏して目を潰され。幽閉されて悲劇的な人生の幕を閉じる。

ペドロ2世。ラミロ2世のひ孫でレコンキスタの英雄。戦闘能力はかなり高く、ファンタジー映画やゲームの中では主要キャラになるタイプだが、なぜか小説の中で影が薄い。

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