ダーンリー卿ヘンリー・ステュアート(5)
文字数 986文字
ダーンリーは友人のリッチオにさえ不信感を抱くようになった。そんなダーンリーに、リッチオの権勢に反感と危機感を抱いていた貴族達が接近し、リッチオ殺害の企みに署名させた。リッチオを殺害したあかつきにはダーンリーに国王としての実権を与え、見返りにプロテスタントの信仰を保護し、さらにマリ伯一味の復帰を認めるという条件であり、他にマリ伯、アーガイル伯、グレンケアン、ルースヴェン卿、モートン伯、リンゼー、アラン伯の非摘出子ジョージ・ダグラスが署名した。
この時、一味はメアリーをお腹の子供もろとも殺害するつもりだったという説もある。この事件の前の2月13日に、イングランド大使ランドルフは、レスター伯ロバート・ダドリーに宛てて
ダーンリー父子の間では女王の意に反した王位獲得の陰謀が進められています。うまくいけば国王(ダーンリー)の同意を得て、10日以内にデイヴィッド(リッチオ)の喉はかき切られる事になるでしょう。いえ、これよりもひどい災いが他ならぬ女王の身にも及ぶという噂も、私の耳に入っております。
と、この事件を予測するような手紙を書いている。
暗殺者達はメアリーをホリルード宮殿に幽閉し、ダーンリーに完全な王位を与えることを迫ったが、メアリーは断った。その後、彼女はダーンリーに、反乱貴族達は彼にとっても信用できない相手であることを説明し、説得する事に成功した。近衛隊長アースキンの助けによりメアリーは宮殿を脱出し、ボスウェル伯、ハントリー伯、アソール伯、フレミング伯らと合流し、8000人の兵が集結した。不利と見たマリ伯一味は再びイングランドへ逃亡した。