マルティン・ルター(15)
文字数 838文字
初期のルターは、ユダヤ教徒を反教皇運動の援軍とみなして、ユダヤ人はイエスと同じ血統であると主張して、ローマ・カトリックの反ユダヤ主義に抗議し、ユダヤ人に改宗を勧めた。
しかし、騎士戦争や、ルター派のミュンツァーによる農民戦争が起きると、ルターは反乱勢力を批判し、それ以来ルターは人間世界のいたらなさや、政治的責任を強く感じるようになり、人間の内的自由に、神によってもたらせた地上の事物の秩序が対置され、服従の義務を唱え、キリスト教徒は従順で忠実な臣下でなければならないと説くようになった。
僕はそもそも修道院にいた時にルターが聞いた声は本来の神ではなく、ルター自身が父の反対を押し切って修道士になったことや修道院での厳しい生活、神への恐怖から精神の崩壊の危機にあった時に、それを救うための自身の内面の声だったと思います。それで本人が救われ気持ちが安定すればそれでいいのですが、宗教改革の指導者としてその考えを他人にも広め、さらに現実がうまくいかなくなるとますます過激に自分の説を固め、カトリックを批判して他にも意にそぐわない相手を徹底的に弾圧する、その思想と行為は根本的に間違っています。
さらに、ユダヤ人の改宗者はごくわずかで、改宗した者もほとんどが間をおかずしてユダヤ教に回帰したためか、1532年には「あのあくどい連中は、改宗するなどと称して、われわれとわれわれの宗教をちょっとからかってやろうというぐらいにしか思っていない」と述べている。そのうちにルターは、不首尾の原因をユダヤ人のなせる業となせるようになっていた。