2022/03/10

文字数 2,586文字

 7時半に起床しました。
 一度父がえづいている声で目が覚めました。
 寝ぼけた頭で耳を澄ませて状況を探ります。えづくのが一通り終わって、母が色々話しかけているのが聞こえました。その話し声で父はトイレで嘔吐していたのだと気付きました。数日前病院に行ったので薬の副作用かもと思う一方で、ここ最近はそういう薬は飲んでなかったようにも思えて、もしかしたら新たな病変かもと思いました。
 どうするべきか考えている間に落ち着いたみたいでした。聞こえた時にすぐに行っていれば何か手伝えたと後悔しました。向き合うのが怖くて布団から出られませんてした。ちゃんとしなければいけないのに。予期せぬことが苦手で人と関わることを避けてきた結果普段とちがう事への対応力が年相応に培われませんでした。世事にも疎く、家族にもアテにされていないような。母はふとした拍子に自分がおかしい人間だと冗談半分に言います。姉にそんな冗談は言わないのできっとやっぱり自分はおかしかったのです。ちゃんと自分はおかしいと言ってくれたら、あるいは自分でちゃんと気付けたらなんて考え始めて、起きてから寝られませんでした。
 現実逃避を挟みつつこれを布団の中に潜りながら書いています。本当にしっかりしないと。普通に明晰な人ならちゃんと危機感を持って意識できることが自分には出来ません。最近はそれは自分が孤独だからだと感じます。常に誰かの目を感じていれば嫌が応にもしっかり出来そうな気がします。本当にちゃんと一度診断を受けてみるようにしないと。自分が人と仲良くなれないのが単なる怠慢なのかそれとも治せるものなのか。半分は確かに何か治療が必要なものかもしれない一方で、半分は自分の気の持ちようでもあると思います。
 意を決して起きます。
 どうにも父の調子が悪いので救急車を呼ぶとのことです。介護タクシーは通院時にしか呼べず、だからといって自分たちだけで行くのは難しいのでもう呼ぶことに。父がまる二日バナナ1本しか食べていないことを初めて知りました。二日前に抗がん剤を打ったせいかもしれないけど吐き気はわからないとのことでした。脳に転移したかもしれないと思いました。
 朝食を済ませた後くらいに父と母の支度が済んで119しました。このご時世なのか質問内容は多いものの、電話している最中にもう救急車は到着して凄いと思いました。
 少しだけ父と対面しました。意識ははっきりしていますがしんどそうでした。何となく顔がどす黒くなっていて、何と声を掛ければいいか分かりませんでした。
 救急隊員の方が来ました。凄くハキハキした口調ながら一方で励ますような声色で心強かったです。かっこいいと思いました。父の状況を聞きつつ担架で父は運ばれました。小さなことだけ手伝いつつ母は父と共に救急車に。帰りは姉に迎えに来てもらう算段です。今日姉が休みで良かったです。一方でこんな時に頼りにならない自分が情けなく思いました。やっぱりもっと車の運転をするようにしておくべきでした。
 とりあえず在宅勤務を始めますが、不安感で中々集中出来ません。やっぱりもうながくないように思えます。長くても半年、もしかしたら3ヶ月かと。いっそ脳腫瘍でなにも分からなくなってしまったら、なんて考え出してしまいます。とりあえず自分は仕事しないと。喪に服す余裕はあるくらいにならないと。
 しかし集中出来ません。苦痛を紛らわそうとついスマホを見てしまいます。
 何とか気を引き締めて仕事に挑みます。多少は気分を入れ替えて集中し始めましたが、階下で姉が何かしているのが聞こえただけで事態がどう進展したのか気になり不安になります。
 父が入院すると連絡が来ました。
 詳細はまだ分かりませんが姉が母を迎えに行きました。どういうことか色々考えてしまいます。もうこれがいよいよ最後の入院かもしれません。その覚悟はしておかないと。あまり不安を抱かないように。過度に心配がるのはきっと甘えです。しっかりしないと。入院というのは一方で安心しもします。
 昼休憩に入って昼食を食べながら母と少しLINEしました。現状ただ点滴を打って病棟が空くのを待っているらしいのですが、やけに準備に時間がかかっているみたいです。
 昼食を済ませて昼寝しようとするもあまり眠れませんでした。
 その後仕事の続き。
 母と姉が一旦帰ってきて安心しました。父の着替え等を取りに帰ってきたそうです。
 詳しい話は後ほど聞くとして仕事に挑もうとするも、もう何だか頑張る気になれませんでした。内心半ば父を自分から切り離すことを意識できかけてはきました。父が死んでも自分が幸せになる可能性は、希望はあると。でもそれはそれとしてもし亡くなった時に服喪で仕事に穴を開けても問題ないようにちゃんと仕事しないといけないのですがだめでした。
 1時間残業してキリのいいところで退勤。
 夕食を済ませながら顛末を聞きました。またとりあえず1週間の入院らしいです。点滴もただの生理用食塩水らしく、栄養剤をできれば打って欲しいところでした。またこれを機に父は治療をもうやめる意思を示しているとのことです。父からすると辛い決断だと思います。しかしもう抗がん剤が効いていない上に今回の不調の原因に絡んでいるかもしれないとなったら、もう仕方ないかもと思いました。
 また父の近況についても聞きました。ここ二日はずっと寝ていたらしいです。ご飯を食べないのとずっと寝ているのとで、トイレに行くにも母の手助けを求めるくらいになっていたのかもしれません。また頓服の鎮痛剤にひどく固執していて、今回も入院が決まった時にそれが手元に無いことに慌てていたらしいです。入院が嫌なのはその薬を好きに飲めないのもあるかもしれません。母と姉は父はだいぶ自分の体調不良に敏感だとぼやいていました。自分は他人のことを言えないのですが、仮に父は体調不良を訴えこそして実際客観的にはまだほんの少しだけ余裕があるということなら、少しだけ希望的なことなのかもしれません。
 その後入浴して自室に。今日一日はずっと不安な気持ちでした。ちゃんと向き合わないと。過度に不安がらずハキハキしないと。
 明日も在宅。今日できなかった分明日はしっかりしないと。

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