老いた少年少女

エピソード文字数 412文字

 老いた少年が子どもたちに混じっている
 未来への可能性に満ちた(わらべ)たちに囲まれて
 断崖から眺めるように世界を見つめている老いた少年
 枯れた孤独
 皺の刻まれた乾いた思考
 自分ほど年老いた者は老人にもいないと少年は思っていた

 老いた少女が子どもたちに混じっている
 夢見る輝きに満ちた童たちに囲まれて
 棺桶から眺めるように世界を見つめている老いた少女
 喪われた華やぎ
 罅割(ひびわ)れている傷物の精神
 自分ほど年老いた者は老人にもいないと少女は思っていた

 そうして老いた少年と老いた少女は出会い
 自分と似た老残(ろうざん)の魂を相手に見出だして
 老夫婦のような恋をした
 穏やかな会話
 凪のような交際
 そうしてふたりとも年を取り
 本当の老夫婦と相成った
 やがてふたりが死んだとき
 彼らはお揃いで
 童のようなあどけない死顔(しにがお)をしていたという
 老いた少年少女の魂よ安かれ
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