言葉にされた祈り

文字数 328文字

 本棚に並ぶ
 愛する言葉たち
 それを語った人たちの多くは
 もう死んでいる

 死後に生まれた
 遠く隔たっただれかが読んで
 共感したり
 こころの支えにしたところで
 死者には関係ないことだろうか
 どうでもいいことでしかないのだろうか

 魂が遡行して
 過去が現在になる
 言葉に宿る想い
 伝わらないものが伝わらないまま
 傷口が傷口のまま
 なおも痛ましく

 祈りは消えるもの
 胸中にさざめいて
 届いたのかもわからず
 淡く霞む
 それだけのもの

 言葉にされた祈りは
 望もうと望むまいと
 後世に残ることがある
 祈りの本源から外れてはいても
 それに救われるだれかにとっては
 祈りを祈りたらしめるなにかは
 言葉という
 罪深い不純物を介しても
 なおも不滅の色合いを(たた)えたまま
 そこにある
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